ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチなど、18世紀よりも前に活躍したヨーロッパの画家たちは「オールド・マスター」と総称される。そのオールド・マスターの1人、イタリアの画家ミケーレ・マリエスキの絵画が7月5日、ロンドンサザビーズ社が主催するオークションに出品されることが発表された。

出品されるのは、マリエスキの1740年代の油絵作品《プンタ・デッラ・ドガーナとサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂》(La Punta della Dogana e san Giorgio Maggiore)だ。題名の通り、絵画にはプンタ・デッラ・ドガーナやサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂、そして河川を渡るゴンドラといったヴェネツィアの大運河の景色が描かれている。

そして、この油絵は一度ナチスのもとに渡った後、長い年月を経てこの地に帰還したという歴史がある。

ナチスに奪われた絵画

1937年のウイーンにて、グラフ夫妻というユダヤ系オーストリア人の手に渡ったことが、この油絵に対して最初に行われた売買であった。その1年後にアンシュルスが起こり、グラフ夫妻は子供を連れて自国から逃れることとなった。

その際、倉庫に収容した油絵は、やがてナチスにより奪われた。それから数年後、一家はニューヨークに定住することとなったが、油絵はロンドンでのオークションにより、別の人物の手に渡っていた。グラフ家は絵を探し続け譲渡を求めたものの、それは未だ叶っていない。 

再びグラフ夫妻の息子に

今回の絵画は、現時点でも50万ポンドから70万ポンド、日本円にして約7000万円から1億円という高値での値踏みがされている。しかし、注目されているのは価格の面ではない。

落札の予定者は、グラフ夫妻の義理の息子たちなのだ。彼らと、ナチスの略奪後に油絵を手にした人物の権利相続人の間で、利益を分配する契約のもとで絵の取引が予定されている。つまり、数十年ぶりにグラフ家に油絵が戻って来ようとしている。サザビーズ社のリチャード・アロノウィッツ氏はオークションについて、このように語っている。

「この絵画に関して長年議論を続けてきた立場からすると、このオークションを通して元所有者と現所有者が和解し、その長い歴史が完結するのは喜ばしいことです。そして同時に、この売買が弊社の今夏最大のイベントとなるのではないかと考えています。」

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