ニューヨークのワールド・トレード・センター跡地に、ミケランジェロが「システィーナ礼拝堂」に描いたフレスコ画34点の精密なコピーが登場した。オリジナルとほぼ同じ大きさで、ミケランジェロが渾身の力で描いた《天地創造》や《最後の審判》などが鑑賞できる。

遠くの作品を身近に

映画『グッド・ウィル・ハンティング』のなかで、ロビン・ウィリアム扮する教授が、マット・デイモンが演じるウィルにこう語るシーンがある。「美術について問えば君は本から得た知識を並べ立てるだろう。(中略)だが君にシスティナ礼拝堂の匂いは語れない」

人類が歴史のなかで残してきた遺産のなかでも、ミケランジェロの作品は最上級だ。そしてこの教授が語るとおり、バチカンのシスティーナ礼拝堂に赴かなくては、ミケランジェロの作品を体感することはできない。

しかし、だからこそ全人類の遺産であるミケランジェロの作品を、原寸大に近い大きさで、画家が描いた当時の色彩で、遠く離れた国でも感じることができるようにと発進したプロジェクトが、ワールド・トレード・センターの「Up Close: Michaelangelo’s Sistine Chape」なのだ。

このプロジェクトを発案した美術史家リン・カターソンは、「ニューヨーカーやニューヨークを旅行する人々が、最新技術を駆使した鮮明な画像で、ミケランジェロのフレスコ画の細部に至るまで鑑賞できる」と語っている。

現代美術に劣らない斬新さ

今回のプロジェクトが斬新な点は、ミケランジェロのフレスコ画をルネサンス時代の建築の中ではなく、スペイン人の現代建築家サンティアゴ・カラトラバが設計した空間の中で見学できる点である。

2016年3月に完成が祝われた「オキュラス」と呼ばれるステーションハブは、ダイナミックな白の建物で、その中に設置されたミケランジェロの作品は、斬新さにおいて現代美術に少しも劣らないことを実感させられる。

設置された34作品は、オキュラスの空間に合わせてわずかではあるが縮小されている。しかし、《天地創造》の一部である《アダムの誕生》だけは原寸大でコピーされた。最新技術を利用した高精細度の画像は、オリジナルのフレスコ画のひび割れにいたるまで再現できる。

そして、システィーナ礼拝堂の天井画は、下から見上げることしかできないが、ワールド・トレード・センターに置かれた「天地創造」は、目の前で楽しめる。これは、オリジナルを上まわる利点といったところだろう。

BY.