シュルレアリスムの代表的なスペイン人芸術家サルバドール・ダリは、画家と分類されることが多いが、劇やコスチュームのデザイン、ファッション関連のデザイン、そして広告や写真に至るまで多彩な才能を発揮した。中でもあまり知られていないのが、彼が宝石のデザインも手掛けたことだろう。
そのダリによるデザインの宝石が、今年10月から来年1月にかけてダリ美術館で展示される。
1941年に発表
1941年、ヴォーグ誌に掲載された「ダリの宝石にかける夢」と題された記事で、ダリはニューヨークで活躍したイタリア人ジュエリーデザイナーのフルコ・ディ・ヴェルドゥーラと共に宝石を発表した。これ以降、ダリは宝石のデザインにも深い関心を示していく。
その後1949年、アルゼンチン生まれのジュエリーデザイナーであるカルロス・アレマニーとの共同作品で、ダリは再び宝石の制作を手掛けた。テーマは、ダリの頭を離れなかった「ルネサンス」、「カトリック」、そして「核科学」の3分野である。
ダリによる宝石たち
ルネサンス期の芸術家にインスピレーションを得た20作品は、現在スペイン・フィゲラスにあるダリ美術館(劇場美術館)に展示されている。これらの作品は、美術館の共同設立者であるエレアノル・モルセの個人蔵だったが、現在はアメリカ・フロリダ州のセントピーターズバーグにあるサルバドール・ダリ美術館蔵である。
1931年の絵画「記憶の固執(やわらかい時計)」と同じ名前を持つブローチは、木の枝にかかる溶けた時計をかたどる。18金の彫刻で出来た木の枝に15のダイアモンドが光る、1949年の作品だ。
「トリスタンとイゾルデ」は1953年の作品で、18金の彫刻で出来たトリスタンとイゾルデの横顔が、プラチナとダイアモンドで出来たゴブレットを挟んで向き合っている。ゴブレットを満たす赤ワインは、ガーネットで出来ている。
これらの宝石は2009年10月から展示されていなかったが、2016年に回顧展「ダリ展」が日本の国立新美術館と京都市美術館で開催された際に展示され、延べ90万人が訪れた。
ファッションデザイナーとの交友
今回2017年10月18日から2018年1月14日までダリ美術館で開催されるのは、「ダリとスキャパレッリ展」で、ここで上記の宝石が展示されることとなる。
イタリア人ファッションデザイナーのエルザ・スキャパレッリとダリとの交友を中心に構成された本展覧では、ダリの絵画作品以外にも、オートクチュールのガウンやアクセサリー、宝石、写真などが展示される、まさにダリの多彩な才能を窺い知れる貴重な機会となっている。、