昨年、レオナルド・ダ・ヴィンチがドキュメンタリー映画になった。日本では、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮』と名づけられた映画である。イタリアではテレビのドキュメンタリー番組でも始終テーマになるレオナルド・ダ・ヴィンチのこと、わざわざ映画を見に行こうというイタリア人は少なく、興行成績はふるわなかったようだ。

しかし、話題は集めることになった。というのも、この映画の制作にはレオナルドの研究やその作品の修復では第一人者の1人であるピエトロ・マラーニが登場した他、「レオナルドの美術展としては後にも先にも史上最大」といわれた2015年万国博にあわせた美術展の様子も収録されていたからだ。

そして今年、ミケランジェロをテーマにしたドキュメンタリー映画『ミケランジェロ、その愛と死 (Michelangelo. Love and Death)』が、アメリカやイギリス、フランスなど世界各国で公開となった。『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮』はイタリア映画であったが、今回のミケランジェロはアメリカ人デイビット・ビッカースタッフが監督し、プロデュースはドキュメンタリーでは定評のあるイギリス人フィル・グラブスキーが担当している。

イタリアにおける本映画の評判は概して悪くない。本作品は、ミケランジェロと同時代人であった芸術家ジョルジオ・ヴァザーリとアスカニオ・コンディヴィに導かれるようにして進む。

《サン・ピエトロのピエタ》やシスティーナ礼拝堂に描かれた《最後の審判》などの名だたる作品だけではなく、昨年ミケランジェロが残した唯一のブロンズ像としてニュースになったフィッツウィリアム美術館所蔵の彫刻、10代のミケランジェロが残した《ケンタウロスの戦い》、フィレンツェのサント・スピリト聖堂に残る木製の《キリスト磔刑像》、官能的な《バッカス》などが美しい映像で登場する。

ミケランジェロが、いかに解剖学に造詣が深かったか、これらの作品から知ることが出来るのだという。映画の鑑賞者は、ミケランジェロの工房に足を踏み入れ、彼の製造工程を見ているような錯覚に陥る、というのが本映画の醍醐味である。

また、「詩人」としてのミケランジェロを描いたドキュメントも非常に興味深い。彼が生涯にわたり、若々しい情熱と愛を抱き続けたことが、彼の詩からもうかがえる。

イタリアだけではなく、イギリスやロシアの美術館に残されたミケランジェロの作品まで追った本映画は、「ルネサンスが生んだ大天才の生涯を追う旅を美術ファンならずとも楽しめる作品」とイタリアで評されている。

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