2014年、ミケランジェロの450年忌を記念してヴァティカンの「システィーナ礼拝堂」にLED昭明が設置されたことは、日本でも話題になった。膨大な量の美術品の修復と保存のために、常に財源不足に悩まされているヴァティカンやイタリアには、幸いなことに世界各国から技術的金銭的援助がある。

「システィーナ礼拝堂」のLED昭明も、ドイツの昭明企業OSRAMからの技術的援助とEUからの870万ユーロの資金援助を受けて設置された。そして今年、同じくヴァティカンの「ラファエロの間」にもLED昭明が設置されたのである。

アテナイの学堂

ラファエロが死ぬまで描き続けた「ラファエロの間」

「ラファエロの間」には、4つのテーマで全16枚のフレスコ画が描かれている。ラファエロが1520年に亡くなったあとも、弟子たちによって作業は続き完成したのは1524年。日本でもよく知られているのが《アテナイの学堂》と名づけられた一枚で、世界史の教科書にも必ず登場する。それは、《アテナイの学堂》のなかにレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、そしてラファエロ自身の自画像が描かれているからとされているからである。甘い顔立ちのラファエロが、向かって右の隅からこちらをのぞいている姿はよく知られている。

ミケランジェロのパトロンとしても有名であった法王ユリウス二世の注文でラファエロが描いた「ラファエロの間」のフレスコ画は、システィーナ礼拝堂にミケランジェロが残した《天地創造》および《最後の審判》とともに、ルネサンス美術の粋を伝える人類の宝といえるだろう。

「ラファエロの間」に設置されたLED昭明は2400個

ハンガリーのパンノニア大学の研究班も参加して、太陽光と同じ条件でラファエロが制作した当時の色彩を鑑賞できるというこのプロジェクトは、実は作品への負担を減らすというのが主な目的である。

年間600万人もの訪問者数があるヴァティカン美術館は、訪問者が持ち込む埃などからその保存状態が心配されてきた。また、強い昭明による作品への悪影響も、長年議論の的となってきたのである。ヴァティカン美術館が、作品の保存状態を考慮して将来的には入館者数を制限するのではないか、とはここ数年イタリア国内でよく噂になる。

そして、LED昭明が導入されたことで、なんと70パーセントの光熱費の削減が可能になるのだという。「ラファエロが、完遂した我々のこのプロジェクトを見ることができないのはとても残念です」と、ヴァティカン美術館館長アントニオ・パオルッチは冗談交じりに語っている。

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