作品概要
《ハーディガーディ弾き》は、画家のジョルジュ・ド・ラ・トゥールによって制作された作品。制作年は1631年から1636年で、ナント美術館に所蔵されている。

『ハーディガーディ弾き』は、フランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールによって、おそらく1630年代に描かれた絵画である。フランスのナント美術館に所蔵されている。
ハーディガーディは、ギターやリュートのような形をした弦楽器である。弦の下の回転板が弦をこすることで音を出すが、クランクという器具で操作されており、弓で弦をこすって演奏するバイオリンとは異なる。音色はバグパイプのものに似ている。10世紀ごろに誕生し、ルネサンス期には人気を博したが、その後は多様な音色を奏でる楽器の発達につれて廃れてゆき、17世紀には「こじきの楽器」として卑しめられた。
しかし18世紀になるとフランスの宮廷でもてはやされるようになり、六弦の「ヴィエル・ア・ル」という形が確立した。これは現在ではハーディガーディの標準的な型となっている。本作は、フランス語の「ヴィエル・ア・ル」から「ヴィエル弾き」というタイトルで呼ばれることもある。
この作品が描かれた17世紀では、ハーディガーディは「こじきの楽器」であり、また盲人の楽器でもあった。老人は、楽器底部のクランクを回して音楽を奏でている。閉じた目や開いた口の表情が非常にリアルで印象的である。みすぼらしい衣服には蠅が止まっており、老人の孤独と哀愁が巧みに表現されている。徹底的な細部描写には、老人に対し同情的にならず、その姿をどこまでも現実的に描き出した画家の冷静さが見て取れる。
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