作品概要
《聖家族》は、画家のミケランジェロ・ブオナローティによって制作された作品。制作年は1503年から1506年で、ウフィツィ美術館に所蔵されている。

《ドニ・トンド》または《ドニ・マドンナ》は、ときに《聖家族》と呼ばれ、円熟期のミケランジェロにより制作された現存する唯一の完成したパネル絵である。現在は、フィレンツェのウフィツィ美術館にある。オリジナルの額装のままであり、おそらくトスカーナの有力な家庭の娘マッダレーナ・ストロッツィとの結婚を記念してアニョロ・ドーニによって依頼された。
ルネッサンス期
この絵画は、円形の絵画であり、また丸い額縁である。これらは、しばしばルネッサンス期にみられる独自のスタイルである。
1506年の「ラオコーン」の発掘後で、システィーナ礼拝堂の天井フレスコ画の制作が開始された1508年以前である、およそ1506年の終わりか1507年に制作された可能性が高い。
画面構成
「聖家族」は、洗礼者ヨハネと共に、キリスト教の聖家族(幼児キリスト、マリア、聖ヨセフ)が前景に、後ろに、ぼんやりとした裸体の5人の男性の姿が描かれている。これらの裸体の姿が描かれていることについては、さまざまな解釈がある。
構成として、絵の中央に大きく描かれた聖母マリアがもっとも目立っている。マリアは地面とのあいだに敷物を敷かず、マリアと大地との関係性というテーマをより伝えるために、地面に直接座っている。マリア像より下にある芝生は緑で、彼女の周りの草のない大地とはっきり対比しているが、現在は、緑色は暗くなっていて元の状態より見えづらくなっている。
聖ヨセフは、おそらく家長として、マリアと比べると高い位置に描いてあり、聖家族の構成としては変わった姿である。マリアは、まるでヨセフが彼女を守っているかのように、ヨセフの足のあいだに座っている。マリアがヨセフからキリストを受け取ろうとしているのか、それともその逆なのか、ということに関し、いろいろと議論されている。
守護聖人
フィレンツェの守護聖人である洗礼者ヨハネが、聖母とイエスと描かれるのはフィレンツェの芸術作品の中では一般的である。洗礼者ヨハネは、聖家族と背景の男性たちとのあいだに描かれている。聖家族の周りには、植物と、おそらく水が描かれている。この絵画は、ミケランジェロが影響を与え、デザインを手伝っている当時の額縁のまま残っている。
額縁
額縁は、華麗に彫られ、5つの頭が、宙に三次元に突き出ている、かなり変わったものである。後ろの5人の裸体と似ているため、これらの頭は、なんらかの意味、思惑があるのだろう。
この額縁は、ほかにライオンの頭、草木、星、三日月の彫刻が施されている。これらのシンボルは、おそらくドーニ家とストロッツィ家、それぞれの家の紋章を用いていて、ふたつの家のを表す月とライオンがリボンで結ばれることで結婚を表しており、それが額縁に施されている。
図像と意味
前景と背景を隔てる水平の帯があり、この帯は、後ろの男たちと洗礼者ヨハネから聖家族を隔てる役割をしている。
後ろの5人の裸体像は、一体どのような意味や役割をもつのか、それは多くの議論や憶測を呼んだ。
聖家族は、背景の裸体像より大きく描いてあり、聖家族と裸体像たちのいる地面のあいだには、水がみえる。聖家族は、全員、キリストをみつめ、5人の裸体の男たちは誰も、キリストを直接みてはいない。遠くの背景には、風景が描かれている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。