作品概要
《聖アントニウスの苦痛》は、画家のミケランジェロ・ブオナローティによって制作された作品。制作年は1487年から1488年で、キンベル美術館に所蔵されている。

《聖アントニウスの苦痛》は、ミケランジェロが12歳または13歳の時に描いた作品であり、ミケランジェロの絵画作品の中でも初期のものである。
マルティン・ショーンガウアーがこのモチーフで版画を彫った後で、ミケランジェロがそれを絵画として描いた。近年、テキサス州に位置するフォートワースのキンベル美術館の常設展示作品となった。
図像
『黄金伝説』等のような一般的な中世の題材を扱っており、図中、誘惑に耐えんとする聖アントニウスは砂漠で悪魔に襲われている。それに関連してか、『聖アントニウスの誘惑』は、この題材に関してはより広く知られた題名である。
さらに、この構成は聖アントニウスが天使に支えられながら空を飛んでいる際、空中で悪魔に待ち伏せされていたというエピソードを物語ってもいる。
所蔵の遷移
この絵画ははじめ、ミケランジェロが最初に師事した、ドメニコ・ギルランダイオの研究室に帰属するものとされていた。
その帰属の元、2008年7月にサザビーズで行われたオークションにて、アメリカのアートディーラーが200万ドル(US$)で落札した。そして輸出免状が出された9月、ニューヨークのメトロポリタン美術館に買収された。そこで初めて、色が剥げ落ちた箇所を綺麗に塗り直す等、元の状態に近づくよう厳密に修復された。
そして、たとえば網目の陰影が強調されている等という特徴から、この作品は紛れもなくミケランジェロのものであるとされ、その後すぐにキンベル美術館が買収した。買収価格は未公開だが、推定で600万ドルを超えると言われている。
その他
ジョルジョ・ヴァザーリは、著作『美術家列伝』にて、ミケランジェロはショーンガウアーによる版画の後で聖アントニウスを描いたと記し、さらにアスカニオ・コンディヴィは、ミケランジェロが、版画では描かれていなかった魚の鱗を描くために市場へ赴いたことを記録している。誇張は除き、ミケランジェロは人物たちの下に風景を加えたほか、聖アントニウスの表情も描き換えている。
この作品は現存している4つのミケランジェロによるパネル画の中の1つであるが、ヴァザーリは後にミケランジェロの油絵を非難するような記録を残している。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。