作品概要

3本の蝋燭》は、画家のマルク・シャガールによって制作された作品。制作年は1938年から1940年で、個人蔵に所蔵されている。

詳細な画像を見る

1939年、ナチス・ドイツがポーランドを占領し第2次世界大戦が始まった。1940年、ドイツ軍のタンクがフランスに攻め込み、フランス軍を数週間の内に打ち破り国土の北部全土を支配下に置いた。

フランス人であるシャガールの友人たちにとっては、戦争とは普段とかわらない生活を続けながら非難や批判を浴びせる対象である抽象的な概念の世界かもしれないが、ユダヤ人であるシャガールがナチス・ドイツに占領された土地に住むということは、彼自身が強制収容所に送られる可能性、死の危険を意味していた。

1940年の春、シャガールは占領が始まる前に、家族と彼の作品共々、南フランスのゴルデス地方の街へ逃げた。その後、操り人形のようなヴィシー政権がドイツにすり寄る政策を打ち立てるのを見たシャガールは、この場に留まることも危険だと判断。シャガールはマルセイユにて権力により拘束され、危うく収容所へ送られるところだったが、アメリカ合衆国の介入によりすぐに釈放されるに至った。

ニューヨークへ

1941年6月、シャガールは家族とともにマルセイユから船に乗り、1941年6月23日、ナチス軍がバルバロッサ作戦で彼の故郷であるロシアを侵略した翌日、ニューヨークに到着した。

アメリカ合衆国でシャガールがまず最初に落ち着いたのがニューヨーク市郊外、コネチカット州プレストンだが、その後市内に移った。結局、シャガールはアメリカに5年間住み、絵の展示を行いながらも、1942年にはメキシコを訪れ、舞台デザインなどもし、注目を浴びた。

不安や怒り それでも愛や希望を
第2次世界大戦は、ドイツ、フランス、ロシアに暮らし仕事をしてきたユダヤ教徒であったシャガールにとって自分のこととして非常にこころが痛むものであった。その痛み、悲しみ、怒りは非常に強くこの頃の作品に反映され、赤色が多用されている。

2年を要して1940年に完成した「3本の蝋燭」はこの時代の最高傑作であり、3本の蝋燭以外にも多くの詳細が描かれた、非常に魅力のある作品である。彼の他の作品にもよくみられるモチーフ、若い恋人たち、杭柵、音楽を奏でる道化師、青い牛などがみられ、若い恋人たちの周りには天使のような姿も描かれている。

深い緑の葉や白くふっくらとした花の背景に守られるように身をよせ、たたずむ若い恋人たちの姿は、シャガールの愛に対する大きな気持ちと希望を象徴しているようだ。と同時に、赤や青が使われているにしてもどこか影のある暗いトーンのなか、蝋燭を見ている恋人たちはどこか物悲しく不安な表情であるともとれ、シャガールの当時を反映するようである。

作品をもっと見る

基本情報・編集情報

  • 画家マルク・シャガール
  • 作品名3本の蝋燭
  • 英語名未記載
  • 分類絵画
  • 制作年1938年 - 1940年
  • 製作国フランス
  • 所蔵個人蔵
  • 種類油彩、キャンバス
  • 高さ96.5cm
  • 横幅127.5cm
  • 更新日
  • 投稿日
  • 編集者
  • 3本の蝋燭の感想を書き込む

    こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。