パラソルと牛

最愛の妻の死

1944年、悲劇がシャガールを襲った。シャガールの最愛の妻であるベラ・シャガールが流行り病で世を去った。彼らは初めて会った時からお互いを強く愛し合っており、夫婦として共に幸せに暮らした年数は29年であった。

シャガールにとってこの出来事は大きかった。愛する対象としてだけではなく、ベラは制作意欲の沸き処であり魂の拠り所であり、皮肉なことにベラの書した書き物を読むだけで心を軽くすることができた。（ベラは小説家であったが彼女の人生の中で1度も出版されたことはない）

幼少期以来初めて、シャガールは筆と画架を置いた。彼は何か月も、ほぼ1年もの間絵を描くことが出来なかった。

転機

1946年、シャガールは彼のキャリアの始まりであるヨーロッパに戻った。

そこで彼は画家であったヴァージニア・ハガード・マクネイルと出会い、関係を持った。この出来事が彼の創作意欲を沸き立たせ彼の筆は新たな快活さを得た。これは「牛とパラソル」に強く表れている。

作品詳細

この詩的な絵画はシャガールの豊穣への幻想と色使いの技術の精通を捉えた素晴らしいイラストである。

主体は村の屋根の上を歩き足の一歩が村の道化師を踏んずけているパラソルを携えた牛という風変わりなものである。太陽の暖かさは広がっていくオレンジ色で表現されている。

作者は代理品を投入するというクラシックな画法のスタイルを取り入れており、人の代わりに動物が用いられている。この技法はシャガールの作品のなかでは特徴的であり作品の中心にある皮肉と魅力を秘めている。