作品概要
《プラム》は、画家のエドゥアール・マネによって制作された作品。制作年は1877?年から1877?年で、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート ワシントンD.C.に所蔵されている。

本作のモチーフは、カフェに座っている若い労働者の女性。そのたたずまいには静寂と哀愁が漂っている。女性の前には当時のカフェで流行っていたブランデー漬けのプラムが置かれている。すぐ近くのほかの席に座る客から女性を見ているといった構図である。
画題
彼女は、ウエイターがプラムを食べるためのスプーンを運んでくるのを待っているのだろうか。右手に頬を乗せやや前方にもたれかかっている姿勢である。うつろな表情で、物思いにふけっているのか、視線はぼんやり遠くを見ている。
左手はテーブルの上にあり、火のついていない煙草を持っている。刺繍が施されたピンク色のドレスと白いブラウス、頭にはシルクとレースで飾られた黒い帽子をかぶり、赤い長椅子に腰かけている。バッグには装飾された格子窓。
プラムが持つイメージ
プラム酒として知られているプラム。プラムは暗に女性のセクシュアリティを表す果物でもある。
彼女は、客を待っている売春婦なのかも知れない。カフェの店員は彼女の持つアンニュイな雰囲気に目が離せない。
カフェ・デ・ラ・ヌーヴェルアテネ
先ほどから登場するこのカフェは、パリのピガール広場に位置するカフェ・デ・ラ・ヌーヴェルアテネ。カフェスタイルの鉄の脚がついた大理石のテーブルがあったことで有名だ。
ただし、この絵画のほとんどは、マネのアトリエで制作されたと思われる。装飾された格子窓や金色の縁取りといった背景は、カフェの他の描写と調和していない。
また、この絵画において、マネはところどころ、極めてシンプルな描写をしている。例えば、グラスの中のプラムと女性の左手は、実に簡単に数筆で塗られているといった具合である。
モデルは、女優のエレン・アンドレである。アンドレは当時の画家の作品に度々登場している。エドガー・ドガの《アブサン》やルノワールの《舟遊びをする人々の昼食》が有名であろう。
《プラム》と《アブサン》
1876年に描かれたエドガー・ドガの作品《アブサン》(または《カフェにて》)と、本作《プラム》には、モデル以外にも類似点がある。マネはどうやらドガの《アブサン》に影響を受けて本作を制作したのではないかと推測される。
その2作を比べてみると、ドガの《アブサン》の方が、より憂鬱で絶望感さえ感じる暗いイメージの作品である。マネの《プラム》はそれよりも少し明るい。モデルの女性の孤独が、もしかしたら次の瞬間打ち破れるのではという希望が感じ取れる作品である。
来歴
1881年頃、マネはこの絵画をコレクターのチャールズ・デュードに売る。そして、1914年のデュードの死とともに、デュードの妻へと相続される。
その後、デュードの妻が手放したことで、1919年前後、アーサー・サックスのコレクションとなる。さらに1961年には、ポール・メロンへ売られた。
1971年にワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートへ寄贈され、現在に至る。
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