作品概要
《金の支払い》は、画家のジョルジュ・ド・ラ・トゥールによって制作された作品。制作年は1620年から不明年で、リヴィウ美術館に所蔵されている。

『金の支払い』は、フランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールによって、おそらく1620年代に描かれた絵画である。ウクライナのリヴィウ美術館に所蔵されている。1630年から1635年にかけて描かれた同タイトルの作品があるが、こちらは本作と左右反転したものになっている。
この作品は、ラ・トゥール自身の署名がある点で貴重である。世界中の美術館に40から50点あるラ・トゥール作品の中でも、署名があるものは10点以下だからだ。本作は長い間、オランダの画家ヘラルト・ファン・ホントホルストのものであると考えられてきたが、1974年にX線写真を撮った際に画家の署名が浮かび上がったことから、ラ・トゥールの作品であると正式に認められた。
鑑賞者の注意を引くのは、ろうそくに照らされた本とコインの乗った中央のテーブルと、知識人風の長いあごひげの男性達であろう。ろうそくは三人の男性を照らし、残る三人はろうそくからやや距離があるが、衣服の赤色は闇の中で鈍くなることなく、作品のアクセントとなっている。
この明暗のコントラストはしばしばカラヴァッジョ作品と比較されるが、カラヴァッジョ作品における光が画面の上部や側方、もっと言えば画面の外側からのものであるのに対し、ラ・トゥールは光源をろうそくという形で絵の中心に据えている。ろうそくは作品の参加者として、そこにいる人物の思考や願望の輪郭を照らし出す。描かれている人々の表情や姿勢は静的なものだが、壁に伸びる巨大な影は、何やら謎めいた不穏な色合いを帯びており、不気味である。
一見すると税金の徴収を描いただけの絵画に見えるが、キリスト教主題の「マタイの召命」(使徒マタイは徴税人であった)の場面を描いた可能性も指摘されている。
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