作品概要
《キリスト降架》は、画家のジョルジョ・ヴァザーリによって制作された作品。制作年はc.1540年から?年で、カマルドリ修道院に所蔵されている。

ジョルジョ・ヴァザーリの描いた『キリスト降架』は他にもあるが、こちらは1540年頃に制作された作品である。イタリア・トスカーナ州のカマルドリ修道院に所蔵されている。
死せるキリストを十字架から下ろす場面である。この作品は、ヴァザーリがどのようにしてマニエリスム様式で絵を描いたかを示す良い例のひとつである。この絵画の色彩、人物、誇張表現などは、調和とバランスの概念から離れるという後期ルネサンスの考え方を表している。
この絵画の表現法として、特に線と色の使用によって人々の感情が描かれているという点である。描かれている人々はほとんどが横顔しか見えず、鑑賞者は彼らの感情を読み取ることができない。キリストの顔からも苦痛はさほど感じられない。しかし例えば死せるキリストの肌は、それと比べて健康的な周りの人々の肌色により、その生気を失った白さが強調されている。表情の描写具合はキリストも周囲の人々も同程度であり、むしろ人々の感情はこのような色や線の使い方により描き分けられていると言える。
下部右端の手を差し出している人物はおそらく使徒ヨハネである。彼の足はダンサーのようにポーズをとっている。左下で女性(おそらくマグダラのマリア)に支えられているのが聖母マリアである。腕と体、頭と足がそれぞれ反対方向に向けられ、かなり不自然な姿勢になっている。これは、ヴァザーリが崇拝するミケランジェロのよく用いた「体をひねる」という表現の模倣であろう。
キリストの周囲が平坦な色調でまとめられているのに対し、下部にいる人々の衣服は鮮やかな赤や青のような明るい色が使われている。これはルネサンス美術に特徴的な調和とバランスの概念とは異なる、意図的に調和を乱すというマニエリスム様式の特徴を表している。同時に、ヴァザーリがマニエリスムをどのように捉えていたのかがわかる部分でもある。
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