作品概要
《ヨセフとポテパルの妻》は、画家のティントレットによって制作された作品。制作年は1555?年から1555年で、プラド美術館に所蔵されている。

『ヨセフとポテパルの妻』は、イタリアのルネサンス画家、ティントレットによって描かれた作品である。
ヨセフはヤコブの息子であったが、他の息子たちの嫉妬によって、エジプトの隊商に売られてしまう。ヨセフはハンサムで貞淑な奴隷であり、ヨセフの主人ポテパルの妻がベッドに誘っても、その誘いを断っていた。腹を立てたヨセフのポテパルの妻は、ヨセフに強姦されたとポテパルに告げ口をし、ヨセフに罪を着せようとした。それによりヨセフは一度投獄されたが、夢を解釈する能力と、試練に直面しても親切心や謙遜、そして信仰を忘れなかったため、最終的にはエジプトの君主ファラオに目を掛けられ、ファラオに次ぐ支配者となった。
『ヨセフとポテパルの妻』や『スザンナと長老たち』は、正義が脅かされ、最終的に保護される寓話であると理解できるが、ルネサンスとバロックの芸術家にとってはよくあることだった。彼らの作品は、教訓としての意味合いよりも、官能的魅力やエロティズムの面が評されていた。ポテパルの妻は、宝飾品以外身に付けておらず、非常に性欲が強いように見られる。裸体を晒したポテパルの妻が、ヨセフの服を脱がせようとし、ヨセフはそれを嫌がっている様子から、ポテパルの妻の方が言い寄っていることを誇張している。
『ヨセフとポテパルの妻』における、人形のような人物画と、表面図柄を強調する描写は、ティントレット特有の、強烈な明暗法と人物を具象的に表現する描きぶりとは異なる。それは、『ヨセフとポテパルの妻』は家に飾る絵画として描かれたことを示している。誰の依頼で描かれたか、また原位置は不確かである。
ディエゴ・ベラスケス(バロック期のスペインの画家)は、2回目のヴェネツィアへの旅行時に、フィリップ4世のために『ヨセフとポテパルの妻』を手に入れた。スペインに到着すると、『ヨセフとポテパルの妻』はマドリード王宮に飾られた。ティントレットの作品は、スペインでは長く評価されることはなかったが、17世紀半ば以降、スペインでも収集される作品となった。
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