作品概要
《聖ヒエロニムスの誘惑》は、画家のジョルジョ・ヴァザーリによって制作された作品。制作年は1541年から1548年で、パラティーナ美術館に所蔵されている。

『聖ヒエロニムスの誘惑』は、イタリアのマニエリスム期の画家ジョルジョ・ヴァザーリによって描かれた作品である。フィレンツェにあるピッティ宮殿内のパラティーナ美術館に所蔵されている。
聖ヒエロニムスは聖書をラテン語に翻訳したことで知られる神学者である。荒野での修業の最中、何度も肉欲の誘惑に苦しんだとされるエピソードが本作の主題である。
画面いっぱいに詰められた人々の筋肉質な体、強烈な色彩が印象的な作品である。聖ヒエロニムスを描く際の一般的なアトリビュートである足元のライオン、翻訳中の聖書、どくろ、石、枢機卿の赤い服などが描かれている。ライオンは、ヒエロニムスが前足に棘の刺さったライオンを助けて友人になったというエピソードから、手に持つ石は、肉欲に打ち勝つためにおのれの胸を石で叩いたというエピソードから来ている。
ヴァザーリは、この聖ヒエロニムスの頻繁に描かれた主題に寓話的な要素を与えた。瞑想のために荒野に退いたヒエロニムスを襲った誘惑的な幻視を鮮明に描写している。聖ヒエロニムスは十字架をじっと見つめている。彼の幻視は、キューピッドを抱いた美と愛の女神、ヴィーナスとして描かれている。ヴィーナスはこの場から離れようとしているようだが、一人のいたずら者のキューピッドは、目隠しをして矢をヒエロニムスに向けている。
作品は未完成である。下書きを板の上に書き写す際の補助となる黒いチョークで描かれたグリッド線が、最初に薄く塗りつぶされた層を通して見えている。
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