作品概要
《デンマークのクリスティーヌの肖像》は、画家のハンス・ホルバインによって制作された作品。制作年は1538年から1538年で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

『デンマークのクリスティーヌの肖像』は、ドイツ出身の画家ハンス・ホルバイン(子)によって1538年に描かれた肖像画。ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている。
この作品は、イングランド国王ヘンリー八世の妃ジェーン・シーモアの死後に、王の次なる結婚相手の候補としてトマス・クロムウェルによって依頼された肖像画である。デンマーク王の末子として生まれたクリスティーヌはこのとき十六歳、ミラノ公の未亡人であった。美しいと言うよりは、聡明で芯の強い女性であった。クリスティーヌはヘンリー八世の以前の妻に対する態度や所業をよく知っていたので、「私に二つの頭があったら、そのうちのひとつをイングランド王に差し上げますのに」と、結婚の申し出を断った。
正面を向き全身を見せているクリスティーヌは、15世紀のブルゴーニュ絵画を想起させるようなターコイズ色の背景の前に立っている。クリスティーヌは1533年にミラノ公フランチェスコ2世・スフォルツァと結婚しているが、その二年後の1535年、彼女がわずか十三歳のときに亡くなり、未亡人になった。作品が描かれた時点で夫の死後数年を経ているが、イタリアの高貴な家の慣習として、喪服に身を包んだ姿で描かれている。唇の明るい赤色は、彼女が指にはめている指輪の赤と重なる。どこかぎこちない笑顔や恥ずかしそうな表情、えくぼなどに、彼女の若さが表れている。また、黒いガウンに対し、抜けるような白い肌が際立っている。
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