作品概要
《死せるキリスト》は、画家のアンドレア・マンテーニャによって制作された作品。制作年は1475年頃年から1478年頃年で、ミラノ ブレラ美術館に所蔵されている。

40代に入ったアンドレア・マンテーニャが描いたといわれる「キリストの死」。ミラノのブレラ美術館の至宝とも讃えられるマンテーニャの傑作である。足をこちらに向けて横たわるイエスキリストは、イタリア・ルネサンスの代表作とも言われ後世の画家たちに大きな影響を与えた作品である。
マンテーニャのもう一つの代表作、マントヴァのサン・ジョルジオ城内にのこる「婚礼の間」のフレスコ画と大差ない時期に描かれたと言われている。マンテーニャは、「死せるキリスト」を自らの信仰のゆえに描いたようで、1506年の彼の死のさいにはマンテーニャの工房に残されていた。翌年、シジスモンド・ゴンザーガ枢機卿によって買い上げられ貴紳たちの手に渡り、現在はミラノのブレラ美術館に飾られている。
研究者たちによると、マンテーニャが描いた当時はもう一枚対をなす絵画があったと言われているが、そちらは行方不明のままである。
十字架から降ろされたイエスは横たえられ、その遺体には香油が塗られている。イエスの頭の横に置かれた香油の壺が、それを物語っている。遠近法がまだ実験的段階と言われていた当時、この作品の大胆な構図は絵画の世界に大きな一石を投じることになった。正確には、完璧な遠近法とはいえないながら、鑑賞者がイエスの足下からその死を悼んでいるような技法は劇的である。とくに、腕はかなり長く見えるのが特徴である。
作品の左には、息子を失い苦悩する老いた聖母マリアと、両手を組み合わせて嘆く聖ヨハネが見える。聖母マリアの向こう側で、悲嘆の声を上げているような口元だけ見る女性は、マグダラのマリアというのが通説である。いずれも、聖人として美化されることなく深い皺を刻んだ顔に、涙がしとどに流れている。
宗教画というよりも、一人の人間の死を徹底したリアリズムで描いた「死せるキリスト」はイエスの遺体もグロテスクなまでに詳細に描かれている。しかし、マンテーニャの筆の力は、むごたらしい死の描写においても鑑賞者の目をそらさない迫力と気品に満ちている。
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