作品概要
《受胎告知》は、画家のアントネッロ・ダ・メッシーナによって制作された作品。制作年は1474年から1474年で、シラクサ ベッローモ宮州立美術館に所蔵されている。

アントネッロ・ダ・メッシーナが、この「受胎告知」を描くための契約書が古文書に残されている。それによると、1474年8月に、アントネッロ・ダ・メッシーナと司祭ジュリアーノ・マニウーニとの間で契約が結ばれ、作品はサンタ・マリア・アヌンツィアータ教会に飾られたようだ。
しかしその後、「受胎告知」は行方がわからなくなり、1897年にシラクサの考古学博物館の片隅から発見された。しかし、保存状態は最悪で作品の剥落が目立つ。また、発見された当初修復のために塗布した小麦粉がさらに作品に悪影響を与える結果となった。それでもなお、作品の主役である聖母マリアの表情と、受胎を告げる大天使ミカエル、そして背景部分は鑑賞可能であることが、不幸中の幸いといえる。
2006年にローマにおいて「アントネッロ・ダ・メッシーナ展」が開催された際、「受胎告知」はイタリアの修復所の最高峰「ローマ中央修復研究所」において修復を受けた。これにより、それまでは確認できなかった部分が発見され、作品の補強が施されている。
「受胎告知」のシーンは、木製の天井が美しい簡素な部屋で展開している。そして、中央よりわずかに左寄りに立つ一本の柱により、聖母マリアと大天使ミカエルという二人の主役が分けられている。画面奥にあるふたつの窓から、部屋の中に光が差し込み陰影が表現されている。残念なことに、部屋の中の家具類などは色の剥落が激しく、詳細を見ることができない。
聖母マリアは、膝をつき胸の前で両腕を交差するというポーズを取っている。これは、シチリア画壇の伝統に従ったものである。開け放たれた右側の窓から、聖霊を表す白い鳩が飛び込んできているのが見える。
大天使ミカエルも、伝統に従って百合を持ってると思われるが、アントネッロのいたずらか柱に隠れて花の部分が見えないようになっている。天使の横顔は、サンドロ・ボッティチェッリの作品を思い起こさせるような繊細な美しさで、ダマスク織の豪奢な衣装に身を包み、東方民族によく見られる髪飾りをつけている。
剥落している下部には、この作品の注文主であった司祭の姿も描かれていた痕跡が見える。アントネッロ・ダ・メッシーナは、ナポリで多くのフランドル派の画家と知り合い、その強い影響を受けたと言われている。
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