作品概要
《救世主》は、画家のアントネッロ・ダ・メッシーナによって制作された作品。制作年は1465?年から1475?年で、ロンドン・ナショナルギャラリーに所蔵されている。

アントネッロ・ダ・メッシーナが描いた「救世主」には、下部に欄干が描かれており、そこに貼られた紙から彼の作品とわかるようになっている。
キリストの首の部分に明らかな描き直しのあとがあり、アントネッロが30才の頃に作品が描かれ、後に修正したものと推測される。「救世主」は、ロンドンのナショナルギャラリー内から1861年に発見された。
イエス・キリストは、黒色の背景と茶色の欄干に囲まれて描かれているが、これは明らかにフランドル派の影響である。光と影がバランスよく描かれている「救世主」は、さらに油絵の技法によりイエス・キリストの髭、巻き毛、光を受けて光る髪の表現など、詳細な部分までその技術が駆使されている。当時の人物像の伝統にそって、胸部から上の部分だけのイエス・キリスト像となっている。彼は、我々を祝福するジェスチャーで描かれている。
首の部分の描き直しを見ると、イエスは最初はもう少し高い襟の衣服を身につけており、祝福する手の位置も高かったようだ。その手の位置を後に下げたのは、イエスの手がその体よりさらに前に出ていることを表現するためであり、つまり絵に奥行を持たせたかったアントネッロの意図が読み取れる。そして、右手は欄干に置かれるように描きなおされている。
また、首を覆っていた襟を取り去ったのも、フランドル派の「固さ」を取り去る意図があったと思われる。アンドレア・マンテーニャやピエロ・デッラ・フランチェスカの表現に見られるイタリア的な「人間性」を強調するために、あえて首の部分の肌を露出させたのであろう。
イエス・キリストの視線は澄み穏やかで、フランドル派に見る厳格さはこの作品には見られない。
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