作品概要
《ピエタ》は、画家のアントネッロ・ダ・メッシーナによって制作された作品。制作年は1476年から1478年で、マドリッド プラド美術館に所蔵されている。

1475年から1476年にかけてヴェネト地方に滞在していたアントネッロ・ダ・メッシーナは、1476年にミラノのスフォルツァ家から宮廷のお抱え画家という依頼を拒否し、故郷メッシーナに戻り1479年の死までをここで過ごした。
故郷に戻ったアントネッロ・ダ・メッシーナは、絵画表現においてリアリズムをこれまでにないほど追求し、その結果として生まれたのが有名な「お告げの聖母マリア」とこの「ピエタ」である。
アントネッロ・ダ・メッシーナ画描いた「ピエタ」は、聖書の中では一切語られていないアントネッロ独自の表現方法となっている。
イエス・キリストは十字架から降ろされ、棺に納められようとしている。その寸前に、天使の一人が悲痛な表情で死せるキリストを後ろから抱きとめているという構図であり、非常にドラマチックである。死せる人をそのままに、口がわずかに開き、両手が無造作に下がっている。釘を打たれた脇腹からはいまだにこんこんと血が流れている。
背景には、その死とは対照的な青い空と美しい街並みが広がっているが、死の象徴として天使の足下には頭蓋骨が転がり、キリストの背後には枯れ木が描かれいる。背後に広がる緑あふれる光景は、キリストがいずれ「復活」するという予言でもある。
「お告げの聖母マリア」と同様、「ピエタ」も個人の注文で描かれた作品である。発注した人が、個人的にこの作品の前にぬかづき祈ったものと推測されている。
生きている天使の赤みを帯びた肌と、死んで青ざめていくイエスとの対比、嘆き悲しむ天使と抜けるような青い空の表現が、見る人に激しい感情を呼び起こさせる作品である。
天使がイエス・キリストを支えるというテーマは北ヨーロッパが起源であり、カルロ・クリヴェッリも同じ表現を用いて作品を描いていえる。
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