作品概要
《ソールティングの聖母子》は、画家のアントネッロ・ダ・メッシーナによって制作された作品。制作年は1460?年から1469?年で、ロンドン・ナショナルギャラリーに所蔵されている。

ロンドンのナショナルギャラリーに残る「聖母子」は、かつてはアントネッロ・ダ・メッシーナの弟子の作品といわれていた。現在では、アントネッロ・ダ・メッシーナが30代の頃に描いた作品とみなされているが、異論もある。アントネッロがまだ故郷のメッシーナにいた頃の作品といわれ、注文主が個人的に聖母マリアに捧げるために発注されたと考えられている。1910年に、ジョージ・ソールティングという人からナショナルギャラリーに寄贈され、この名が通り名となった。
「聖母子」は、全体のアンバランスが目立つ作品である。
聖母マリアの衣装や表情の完成度に比べて、幼児イエス・キリストと上部の天使の表現方法の未熟度が一致しない。
聖母マリアがイエスを抱く半身像で、天使たちにより彼女が戴冠されるという構図になっている。イエス・キリストは手にザクロの実を持っているが、これは聖母マリアの尊厳と純潔を表している。さらに、その色からイエスの「受難」の象徴であり、民族や国を超えて「信仰」のもとに人々がひとつになることも表しているといわれている。
聖母マリアは透明なベールをかぶり、衣装は宝石がふんだんに使われた豪奢なものである。上部にいる二人の天使により、左右対称のバランスがとれているが、フランドル派の影響を強く受けたアントネッロ・ダ・メッシーナのまだ成熟しきらない筆の堅さを感じる作品である。後年のアントネッロ・ダ・メッシーナの作品に見られる奥行が感じられず、とくに二人の天使の平面的な表現からアントネッロの作品であるか疑う専門家も多い。
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