作品概要

書斎の聖ヒエロニムス》は、画家のアントネッロ・ダ・メッシーナによって制作された作品。制作年は1474年から1475年で、ロンドン・ナショナルギャラリーに所蔵されている。

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「書斎の聖ヒエロニムス」の作品が、古文書中に初めて現れるのは1529年である。当時は、この作品がアントネッロ・ダ・メッシーナのものであるのか、あるいはヤン・ファン・エイク、ハンス・メムリンクの作品であるのか、不明であった。

19世紀半ばになり、美術史家ジョヴァンニ・バッティスタ・カヴァルカセッレにより、アントネッロ・ダ・メッシーナの作品と認められた。ヤン・ファン・エイクが描いた同テーマの作品は1456年に制作されており、アントネッロ・ダ・メッシーナは彼の作品をナポリで見た可能性がある。

右奥に、見事な遠近法で描かれたルネサンス様式の柱の連なりと、上部のカタロニア風の大きな窓が特徴の書斎は、三段に描かれている。アントネッロ・ダ・メッシーナの作品の特徴である、フランドル派の影響を受けた光の描き方がこの作品にもいかんなく発揮されている。

作品の中では三段目、ちょうど舞台のようなところに座る聖ヒエロニムスに、光が直接当たるよう構成されている。そして、博学として知られた聖ヒエロニムスのシンボルである書物も強い光が当たり、書物は白く光り輝いている。右奥の柱の連なりの傍らに、聖ヒエロニムスのもう一つのシンボル、ライオンが描かれているのが見える。

書斎が、石の壁を額縁のように描いたことは、作品の構図に多大な調和を与えている。聖ヒエロニムスが座す書斎部分の棚には、彼の愛蔵書が乱雑に置かれていて、現実味にあふれている。書籍の何冊かが開かれてこちらに向けて置かれているのは、書棚に奥行を持たせるための技法である。また、香草を保管するマヨルカ焼の壺も描かれており、当時の聖職者の生活をかいま見ることができる。タイルが敷き詰められたような床も、幾何学的な模様と光と影の表現により、書斎の入口から奥に見える窓までの距離を完璧に感じることができる。まさに、人文主義の時代の人文主義者の書斎といった趣になっているのである。

一段目の段に描かれた動物は、左がヤマウズラ、右がクジャクである。ヤマウズラはキリストの真理の象徴であり、クジャクは全知のシンボルとして描かれている。また、聖ヒエロニムスの座る段の左端に、一匹の猫が描かれている。猫が獲物を捕まえるという習性から、キリストが人々の魂を惹きつけるという解釈もあるが、作品に描かれたアレゴリーの多くは謎のままになっている。

「書斎の聖ヒエロニムス」は小品であるにもかかわらず、その卓越した表現方法により圧倒的な存在感がある作品といえる。1475年から1476年のヴェネツィア滞在中、アントネッロ・ダ・メッシーナは「画家の賢人」というあだ名を与えられるほど高い評価を得ており、そのあだ名もこの作品が直接の因となったのではとする学者も多い。

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基本情報・編集情報

  • 画家アントネッロ・ダ・メッシーナ
  • 作品名書斎の聖ヒエロニムス
  • 英語名未記載
  • 分類絵画
  • 制作年1474年 - 1475年
  • 製作国イタリア
  • 所蔵ロンドン・ナショナルギャラリー (イギリス)
  • 種類油彩
  • 高さ45,7cm
  • 横幅36,2cm
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