作品概要
《聖ゲオルギウスと王女》は、画家のピサネロによって制作された作品。制作年は1436年から1438年で、ヴェローナ・サンタナスタジア聖堂ペッレグリーニ礼拝堂に所蔵されている。

『聖ゲオルギウスと王女』はイタリアの巨匠ピサネロによって制作されたフレスコ壁画であり、イタリア北部のヴェローナ・サンタナスタジア聖堂ペッレグリーニ礼拝堂に現存している。このフレスコ画は歴史上最も重要な国際ゴシック画のひとつである。
1429年のアンドレア・ペッレグリーの遺言書により、ペッレグリーニ家に依頼されて描かれたものであることが証言されているこの作品は、礼拝堂全体への装飾のひとつで、残存している壁画の表面は一部分のみである。製作年については不明だが、一般な推察ではピサネロがローマに帰還した1433年からフェラーラに発った1438年の間の期間に指定されている。
長年の間、礼拝堂の壁からの雨漏りに晒されていたフレスコ壁画、特に竜が描かれている壁画左側の部分はひどく損傷している。損傷を免れた部分は19世紀に壁から取り外されたが、このことが金属製および金箔の装飾を損なう原因となった。
『聖ゲオルギウスと王女』は、トレビゾンドの王女から離れていく聖ゲオルギウス(保存状態の良い右側)と、海の竜(大部分が失われている左側)の2つの部分から成る作品である。
伝説にある通り、まさに王女を貪らんとする竜の討伐に向かうため、自分の馬に跨がろうとする聖ゲオルギウスの一瞬を現存の部分が表している。王女の右後ろには、3頭の馬に乗った騎士達とうずくまる雄牛が描かれており、左に見えるのは猟犬とお供の犬である。
左側を占めるのは、ゲオギウスの船が出航しようとしている場所の周辺に列をなした野次馬の群衆であり、比較的小さな割合で描写されている。また、描かれている様々な人物画が精密に観察されたものだということは、ピサネロによる膨大な数の素描やワークショップが物語っている。
この絵画での甲冑や馬具、王女や従者の衣服の描写は非常に細かい部分にまで及んでいる。描かれている動物からは、自然的構成要素の描写に対するピサネロの情熱が伺える。
上部の高い崖には、豪華な建築様式の建物、螺旋を描く宗教施設、右端には城と、理想化されたトラブゾン建造物が立ち並んでおり、都市の外には吊るされている2人の男性といった、典型的な国際ゴシック様式である不気味でグロテスクな要素が見られる。
青白くなった顔のテンペラ絵の具や非常に黒ずんだ空、はめ込まれていた金属が消えて表面がほとんど黒くなった甲冑など、いくつかの色の細部が失われており、損傷した部分のフレスコ壁画で残存しているのは極僅かな細部のみである。竜に倒されたものの亡骸や骨に囲まれて歩くサラマンダーが、その中で最も重要なものだ。
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