作品概要
《糸杉と星の見える道》は、画家のフィンセント・ファン・ゴッホによって制作された作品。制作年は1890年から1890年で、クレラー=ミュラー国立美術館に所蔵されている。

精神錯乱状態に陥り発作に悩まされたゴッホが、自ら望んで入院することとなったサン・レミのカトリック精神病院「サン・ポール」で療養中に制作された作品。
糸杉、星、月、麦畑など、ゴッホの好んでいたモチーフが全て登場している作品であり、揺れ動き、渦巻いた筆致は、彼の不安定な精神状態がうかがえる。
糸杉に惹かれるゴッホ
画面真ん中で、大きく枝葉を茂らせ、真っ直ぐ空に向かって伸びる糸杉は、サン・レミ滞在期である晩年のゴッホが病室からの風景を元にして、好んで描いた題材である。弟テオへの手紙でも「いつも糸杉の事を考えている」「糸杉をなんとかひまわりのような作品に仕上げたいと思っている」などと綴っており、ゴッホが糸杉に心惹かれていた様子がわかる。
画面上部には、糸杉を挟んで、右側に明るく輝く三日月、左側には光を集めて闇夜を照らす星が描かれている。三日月と星を描くことにより、闇と光のコントラストを作り出しており、中央の糸杉の渦巻く筆致は激しく生きているようにも、寂しげに揺らめいているようにも捉えることができる。
死を象徴する存在
ゴッホにとって、糸杉は死を象徴する存在であったといわれている。もともと、糸杉は「死」を連想させる木で、イエス=キリストが磔刑に処されたときの十字架は糸杉で作られたと言われており、南仏では墓地に糸杉が植えられているためである。
本作は、ゴッホがこの世を去る2ヶ月前に描かれたもので、自らの死期を予感していたゴッホの心象風景が反映されているといわれている。
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