作品概要
《皿のない皿の上の卵》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1932年から1932年で、ダリ劇場美術館に所蔵されている。

母体でのインスピレーション
この作品について、ダリは「自分が母親のお腹の中にいたときに思いついた」と述べている。その真偽に関しては彼自身にしかわからないが、この絵の配色からは、私たちに暖かみを与える。彼の目を強く引きつける色は、鮮やかな黄色やオレンジ、黄土色だと述べている。
結果として、ダリは母親の胎内にいたことを思い出し、この絵を偏執狂的批判的方法で作り出した。偏執狂的批判的方法とは、ある精神的イメージを別の意識的に存在するイメージに重ね合わせて、客観的に表現するイメージ解釈の方法の1つである。
すなわち、現実には見えないイメージを、社会や世間に受け入れやすいイメージに変化させ、絵という媒体を通じて現実に表現することである。
卵黄としてのダリ
本作の中心にある空中に浮いている卵黄が、胎内にいるダリ自身を表現している。その下の皿の上にある2つの卵は、1929年に出会い、彼の妻にあたる愛しのガラを表現している。その当時、ガラはフランスの詩人、ポール・エリュアールと結婚していたが、彼のシュールレアリストに魅せられ、離婚している。
そのため、この絵の解釈としては一緒にいたガラとポールが皿の上の卵で、その上からダリがガラの元へ向かっている様子を表しているようだ。卵のほかに、壁にかけられている小さな物体は時計を意味し、これは著名なダリの作品《記憶の固執》にも用いられている。
また、その上にあるトウモロコシのようなものは、男性の性的象徴を表現している。トウモロコシの左の小窓には、よく見ると小さな人影が見える。これは、《春のはじめのころ》で登場した父と子を表現している。
さいこーのえです
2023年4月28日 10:34 am, ID 61444