作品概要
《壁画》は、画家のジャクソン・ポロックによって制作された作品。制作年は1943年から1943年で、アイオワ大学美術館に所蔵されている。

《壁画》はポラックの初期の作品で、1943年に制作されており、壁一面を埋め尽くす、大きなキャンバスに描かれている。
深層心理の形象
この「ミューラル」を描いた頃、ポロックはアルコール依存症の治療として、ユング派精神分析や絵画療法を受けていた。絵画療法を通して多くの作品が描かれ、薄暗い色づかい、密集した絵画空間が特徴的で、不安定な精神状態を反映しているといえる。
また、ポロックの初期の作品では、アメリカン・インディアンの砂絵やメキシコの壁画よりインスピレーションを受けているといわれるが、この作品では、動物が押し寄せる様子が表現され、ポロックは友人に、「アメリカ西部に生息する全ての動物(牛、馬、アンテロープ、バッファローなど)が大地を突進している。」と語っている。ポロックの言葉では「無意識(深層意識)から作品を描く時、形象は必ず現れてくる。」と残されているが、作品は幼少期の記憶、幼少期を過ごしたアメリカ西部が根底にあると解釈できる。
逸話
キャンバスには1943年と記されているが、実際のところ、制作期間は1944年までといわれる。この時期の作品は1940年代から50年代に掛けてニューヨーク周辺にて活躍した抽象表現主義(ニューヨーク派)に分類され、パブロ・ピカソの影響によりシュルレアリスム(超現実主義)にて作品の対象がかたちを変えて表現されている。
ポロックは、ペギー・グッゲンハイム(Peggy Guggenheim)より委託され、彼女の新居の玄関広間に飾る壁画を制作したが、グッゲンハイムの友人兼アドバイザーのマルセル・デュシャンの提案により、持ち運びができるようにキャンバスに描いたりもしている。現在、壁画「ミューラル」はアイオワ大学美術館(アメリカ・アイオワ州)にて展示されている。
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