作品概要
《賢者の対話(聖ペテロと聖パウロの会話)》は、画家のレンブラント・ファン・レインによって制作された作品。制作年は1628年から1628年で、ヴィクトリア国立美術館に所蔵されている。

《賢者の対話》は、レンブラントの初期代表作のひとつである。本作においては、鮮やかな色調や強い光彩による明暗対比がより際立っており、レンブラント作品の特徴が色濃く出ている作品となっている。
本作よりも以前に制作された作品(トレビとアンナなど)と比べて、ますますレンブラントの個性が際立っているのが分かる。レンブラントの良き後援者であり自らも画家として活躍した、教会の参事会員ジャック・デ・ヘイン三世の財産目録に「二人の老人が座って議論し、一人は膝の上に本を広げ、そこに陽光が射し込んでいる」という記録が残されているが、おそらくこの作品のことだろうと考えられている。
ペテロとパウロ
本作はクリスティアン・テュンペルの指摘によって、新約聖書の書簡「ガラテヤの信徒への手紙」に登場する≪聖ペテロと聖パウロの会話≫と解釈されている。本作の特徴として聖人の特徴を極力描かず、代わりにそれぞれの人物の行動や表情を通じた感情表現の豊かさに重きを置いている。本の一節を指差し、聖ペテロに意見する聖パウロ。2人は対立していたとの話もあるが、その場面を描いたものであろうか。
当時のネーデルランドにおけるプロテスタント主義と考え合わせると、ここには特別な神学的な意味が込められているのかもしれない。聖書のページを指すパウロの顔が光に照らされているのに対し、頑固なペテロの顔は陰の中にある。
ペテロについて
聖ペテロは1世紀頃の人物であり、元々貧しい漁師の息子であった。貧しいながらも信心深く漁師として働いていた時に、イエスと出会い弟子となる。初めは名前をシモンと言ったが、イエスより「岩」を意味する「ペテロ」を名を付けられる。皇帝ネロのキリスト教迫害が激しくなると、信者のすすめによりローマ脱出を図ろうとする、しかしその途中で十字架にかけられる途中のイエスに出会い、自らも考えを改めて殉教したという。
キリストの言葉にあるように、岩のように座り、パウロの言葉に熱心に耳を傾けている。だが、その指は膝の上に置かれた聖書の別のページに挟まれ、パウロの話が終わり次第、自分の主張を述べるつもりであることを伺わせる。こうしてレンブラントは時間が続いていくことを表現している。
光の表現
この絵における光と陰の対比は、オランダの巨匠レンブラントの最もカラヴァッジョ的な部分である。レンブラントがこの技法を用いたのはものの形を明確にするため、そしてそれぞれの人物の個性を表すためだった。理性の光に包まれているパウロは知性と理性の人である。(当時の画家はパウロに共感していた)ペテロは頑固なまでに信念を貫き、直感的である。
レンブラントが22歳の若さで、2人の老人の心理をこれほど鋭く捉えて表現したのは、驚くべきことだといえる。
ラショナルなパウロと頑固なペテロの2人の特徴がこの絵で全て分かる。
2019年8月27日 5:11 pm, ID 141962人に当たる光の明暗が対照的なことから、お互いに確執があったと思う。
レンブラントの初期の特徴である劇的な光を使っているところが印象に残った。