作品概要
《キリスト哀悼》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1500?年で、アルテ・ピナコテークに所蔵されている。

この作品はニュルンベルクの金細工師、アルブレヒト・グリムによって、1500年10月22日に死去した妻マルガレート・ホルツハウゼンに捧げるために、アルブレヒト・デューラーによって制作された。
画面には《キリスト哀悼》の場面が描かれている。これはキリストが十字架にかけられて死んだ後、降ろされた遺体を前にして彼の縁者たちが嘆くシーンである。
作品の構成と技法
この絵では上部に美しい風景が広がっている。遠くの山々や、エルサレムの街の上には、黒い雲がかかっている。その風景は、エルサレムのある中近東の風景というよりは、デューラーの住むアルプスの北側の風景のようである。左側の中景には大きな穴の空いた岩があり、その中にはこれからキリストの遺体が納められるであろう石棺がある。
この《キリスト哀悼》というテーマは、ネーデルラントに多く見られる絵の主題であるが、デューラーはそれをイタリア風に描いた。人物を幾つかのグループに分け、それぞれを関連付けて描くのである。
ニコデモ、マグダラのマリア、福音書記者ヨハネは右からキリストを見下ろしている。中央の聖母マリアとその両脇の二人は共に嘆いている。死せるキリスト、それを支えるアリマタヤのヨセフとキリストの手を握るもう一人のマリア(聖母マリアと同名の別人)が最後のグループである。このようにして三角形のリズムが画面の中で形成される。
特徴
この絵の美点は、何よりも「人々の悲しみ」の表現の豊かさにある。マグダラのマリアは目に涙を浮かべ、他の人々は悲しみを抑えて静かに佇み、聖母の左の女性は、手をあげて絶望の感情をあらわにする。
キリストの体は、画面のこちら側に向かって大きく開かれ、見る者は、あたかもこの場面に居合わせているような錯覚を抱く。
画面の下部の左側には注文者であるアルブレヒト・グリムとその紋章、そして夫妻の息子が、右側にはグリムの後妻とその紋章と夫妻の娘が描かれている。
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