作品概要
《荒野の聖ヒエロニムス》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1496?年で、ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

この作品は、アルブレヒト・デューラーによる油彩画である。キリスト教荒野の聖人である、聖ヒエロニムスが右手に本を、左手に石を持って、荒野で苦行を行っている。
聖ヒエロニムスは347年にダルマティア(クロアチアの一地方)で生まれ、最初は哲学と修辞学を研究したが、のちに、キリスト教神学に身を捧げる決心をした。
彼の最も偉大な功績は、ギリシャ語聖書のラテン語訳であった。彼の翻訳した聖書は『ウルガータ訳聖書』と呼ばれ、現代に至るまで、カトリック教徒が使用する聖書の基礎となっている。
作品の解説
この絵で彼が持つ本は、その偉大な事績を示している。一方、彼は左手に持った石で、自らの胸を売っている。これは彼が砂漠で修行を行ったときの様子を表している。
また、彼の足元には赤い帽子と服があるが、これはヒエロニムスが最初の枢機卿になったという伝説を表し、さらに右側にいるライオンは、砂漠で出会ったライオンに恐れずに近づいて前足に刺さった棘を抜いてやったという伝説に基づいている。
背景には、夕暮れの岩山のドラマティックな風景が広がっている。これはおそらくデューラーがニュルンベルクの近くの谷を水彩でスケッチした素描に基づいている。
作品の技法
ヒエロニムス自体の描写は、伝統的な方法に則っているが、それをこのような現実的な風景の前におくことは、デューラーがその初期においても革新的であったことを示している。
裏面には赤い星のようなものと金色の円盤からなる「終末的な天体現象」が描かれている。日食や流星だという意見もあるが、最も可能性の高いのは彗星である。1493年にニュルンベルクで出版された『ニュルンベルク年代記』の木版画の挿絵に同様のイメージがあり、デューラーはそこから着想を得たのかもしれない。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。