作品概要
《聖母子と聖アンナ》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1519?年で、メトロポリタン美術館に所蔵されている。

所有者の変遷
おそらくニュルンベルクの都市貴族レオンハルト・トゥッヒャーに注文され、1628年までその子孫に伝来した。1630年にバイエルン公マキシミリアン1世がこの絵を購入したが、長い間デューラーの真筆ではなくコピーだと考えられていた。現在は複数の所有者の手を経てニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵され、デューラーの真筆であると認められている。
作品のモデル
描かれているのは、キリストと聖母マリア、そしてマリアの母聖アンナである。聖アンナはドイツでとりわけ崇敬されていた聖人であり、聖母子と聖アンナのテーマは最もメジャーなものの一つであった。
聖アンナはヨアキムの妻で、夫妻には長らく子供がいないことを嘆いていた。しかし天使からのお告げを受け、アンナは男女の関係なくして老齢ながらマリアを身ごもった。それゆえ、聖母マリアはキリストと同じく原罪、すなわち性交による受胎から免れているのである。
描写の技法
多くの聖母子と聖アンナを描いた作品が壮大で厳粛な印象を与えるのに対し、デューラーのこの作品は私的で親しみ深い印象を与える。
しかし一方で、眠るキリストの姿は死を思わせ、彼がのちに経験する受難を暗示してもいる。そのため聖母は悲しみの表情を浮かべて息子に手を合わせ、聖アンナは慰めるように彼女の肩に手を置くのである。
この点はデューラーがイタリア滞在中に大きな影響を受けたヴェネチアの画家ジョバンニ・ベッリーニの作品から着想を得たと考えられる。聖アンナの顔のモデルは当時40代であったデューラーの妻アグネスであることがウィーンのアルベルティーナに所蔵される1519年の素描からわかる。
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