作品概要
《犀》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1515年で、大英博物館に所蔵されている。

デューラーの有名な『サイ』の木版画はヨーロッパに生きたままのサイが3世紀以来初めて連れてこられた記録でもある。インドのクジャラート・スルターン朝の支配者ムザッファル3世がポルトガル領インドの総督アフォンソ・デ・アルブケルケにサイを贈り、総督は本国ポルトガルの国王マヌエル1世のいるリスボンにそのサイを送った。サイは1515年5月20日にリスボンに到着し、それまで西洋世界に知られていなかったエキゾチックな姿は多くの人々の関心を惹いた。
デューラーのこの版画は西洋美術史におけるサイのイメージに決定的な影響をもたらしたが、絵の細部を見ればデューラー自身はサイを実際に見たわけではなかったことが明らかである。例えば背中にある角は現実のサイには存在しないし、腹部を覆う鎧のような皮膚も本物のサイとは異なっている。彼はニュルンベルクに送られたポルトガルからの報告に記されたサイの外見についての詳細な記述と、それに付されたいくつかのスケッチをもとにこの版画を制作したようだ。この木版画のためのデューラー自身の準備素描も大英博物館に残されている。画面上部の説明の文章もほとんどそのままデューラーの素描から写されたものである。
大英博物館に所蔵される『サイ』の木版画はデューラーが生きているうちに印刷されたもので現存する唯一の刷りである。他の美術館に所蔵されているのは全てデューラーの死後に同じ版木から印刷されたもので、1620年にアムステルダムで印刷されたものが最後であり、その版は彩色もされている。
マヌエル1世に贈られたサイはその後教皇に進呈されるためローマに送られたが、船が難破たために死んでしまったという。
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