作品概要
《聖アントニウスと聖パウルス》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1503年から1504年で、大英博物館に所蔵されている。

この作品はアルブレヒト・デューラーによる木版画である。画面には二人の老人がいて、テーブルを挟んで座っている。テーブルの上には水の入った瓶と十字架のついた鈴があり、その手前には小川が流れている。上空から一羽の鳥がパンをくわえて降りてくる。背景は鬱蒼とした森で、木々の間には鹿がいて、左には高い山が見える。
画面左側に座る聖アントニウスはエジプトのコマで3世紀に生まれ、砂漠に隠遁して苦行に身を捧げた。彼の周りには志を共にする人々が集まり最初の修道院が形成されたという。彼は砂漠で修行している最中に天使からお告げを受け、自分より年長でより敬虔な人物が修行していることを知った。彼は出かけていってその人物と出会った。それが聖パウルスである。パウルス(聖パウロとは別人)は227年ごろエジプトのテバイで生まれた隠修士である。彼らは互いに尊敬に満ちた会話を交わしていたが、食事の時間になった。
聖パウルスはいつも天から遣わされるカラスが運んでくるパンによって生活していたので、アントニウスの分のパンについて心配していたが、カラスはその日は賢明にも二人分のパンを運んできた。これらの伝説は聖ヒエロニムスが最初に記録し、その後ヤコブス・デ・ウォラギネによる聖人伝説集『黄金伝説』に収録されて中世から近世にかけて一般民衆のレベルにまで広く知られるエピソードとなった。
物語の舞台はエジプトであるが、この版画の背景はドイツの鬱蒼とした森のように見え、のちのアルトドルファーらドナウ派の描く風景を予告しているようだ。デューラーは1500年から1504年にかけて聖人の絵のシリーズを数多く手がけたが、この版画もその一枚である。
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