作品概要
《メレンコリアI》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1514年で、大英博物館に所蔵されている。

アルブレヒト・デューラーの版画芸術が到達した一つの頂点が1513年から1514年にかけて制作された3点の銅版画である。『メレンコリアI』はその3つの版画のうち最も複雑な内容をもつ作品である。「メランコリー」の擬人像である羽の生えた女性が肘をついて頭を支え、もう片方の手にコンパスを持っている。「メランコリー」とは古代ギリシャ医学にいう人間の四つの気質の一つで、「憂鬱質」を意味する。古代ギリシャではネガティブなものにすぎなかった「メランコリー」は当時の人文学者によって芸術家気質や天才と結びつけられて、新しい意味を持ち始めていた。
彼女の周りには球体や巨大な多面体といった幾何学的な物体がある。また、あたりには木でできた道具が散乱していて、それらは測量や組み立ての道具、つまり建築用具である。多面体と球体は幾何学、測量術とそれに基づく様々な技術・芸術を暗示している。
背後の建物の壁には鈴、砂時計、16マスの魔法陣(縦に足しても横に足しても同じ数になるように数を並べたもの)がある。「メランコリー」の足元では犬が眠っており、逆さまになった石臼には天使がまたがって何か書き物をしている。左上ではコウモリのような生き物が「Melencolia I」と書かれた紙を持っている。眠る犬は「メランコリー」の沈滞しがちな気質を、コウモリと天使は「メランコリー」おの積極的な力と消極的な力をそれぞれ示していると考えられる。
描き込まれたディテールのそれぞれの解釈にはまだ定説がないが、全体としての意味は「メランコリー」の気質と創造性との関連であることは明らかである。すなわち、「メランコリー」という気質はしばしば創造への情熱を奪い去る憂鬱さを秘めているが、一方本質的に創造性豊かな性格なのである。
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