作品概要
《1500年の自画像》は、画家のアルブレヒト・デューラーによって制作された作品。制作年は1500年で、アルテ・ピナコテークに所蔵されている。

この作品はデューラーの3点の油彩による自画像のうち最後に描かれた。完成したのは彼の29歳の誕生日である1500年5月21日以前のことであったと思われる。画中には次のような誇らしげな銘文が残されている。「それゆえわたくし、ニュルンベルク生まれのアルブレヒト・デューラーは28の年に消えることのない色彩でもって自分自身を描いた」。
自画像は茶色を基調とした暗い色調で簡素な黒の背景の中に描かれている。顔の表現は伝統的なキリストの顔のそれとよく似ているという点で見るものに強い印象を与える。中世の芸術においてはキリストは左右対称なポーズでまっすぐにこちらを見つめ、茶色い髪は中央で分けられて肩にかかるように描かれていたからだ。
西洋絵画の長い歴史の中で画家が自らをキリストに似せて描いたのはこれが最初で最期のことであった。下書きを見れば彼の本来変わった形をしていたはずの鼻は理想化されているようだ。また、彼の他の自画像を見れば彼の髪が茶色ではなく金色であったことがわかる。故意に自分の姿をキリストに見立てていることは、胸元に置いた手が伝統的なキリストの祝福するポーズに似ていることからも理解できる。
しかしデューラーは傲慢や冒涜の心からこのような表現をしたのではない。むしろ彼はここで彼の強い信仰心を表明している。「イミタティオ・クリスティ」、すなわち「キリストの模倣」は当時のキリスト教徒の敬虔な生き方であった。同時にここでデューラーは神から与えられた自らの才能を示すためにキリストの姿で自分を描いた。なぜならキリストは神の息子であり、人間もまた神によって造られたため、デューラーを含む人間はいわばキリストの模倣物であるからだ。
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