作品概要
《「最後の晩餐」のための素描(ユダ)》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1495年から1495年で、ウィンザー城王立図書館に所蔵されている。

この素描は1495年ごろレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された。男性の頭部と頸部が描かれており、顔は画面のこちら側から背けられて右側から見た横顔になっている。男性はかぎ鼻で、唇は固く結ばれ、首は力強くモデリングされている。
この素描はミラノのサンタ・マリア・デレ・グラツィエ教会の食堂のために制作された有名な壁画《最後の晩餐》のうち「ユダ」の準備素描である。
裏切りのユダ
ユダ、別名イスカリオテのユダはキリストの十二使徒の一人であった。キリストとその弟子たちの集団の中で彼は会計係の役割をしていた。しかしある時彼は銀貨30枚と引き換えにユダヤの祭司長にキリストを売った。祭司長たちは伝統的なユダヤ教を脅かすキリストの存在を敵視していたからである。
そのためキリストは逮捕され、拷問を受け、最後には十字架にかけられた。その後ユダは後悔して首を吊ったという。
レオナルドの描いたユダ
《最後の晩餐》はキリストがユダの背信に気づき、十二使徒と食事をしている最中に「この中の一人が私を裏切る」と予言する場面である。伝統的にこの場面でのユダは醜悪な顔で描かれたり、一人だけ他の人物らに対してテーブルの反対側に座ったり、邪悪な色とされる黄色の衣をまとって表現される。
しかし、レオナルドはユダをそのようには描かなかった。サンタ・マリア・グラツィエの《最後の晩餐》におけるユダはキリストの向かって左の三番目に描かれていて、後代の修復家の誤った加筆によって現在は悪人のような顔をしている。しかし本来は静かな驚きの表情をしていたことをこの素描は示している。
素描のモデリングは非常に繊細に行われているが、横顔の強調された輪郭線の部分には恐らく後代の別人の手が加わっている。
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