作品概要
《聖アンナの頭部素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1510年から1515年で、ウィンザー城王立図書館に所蔵されている。

この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチによって1510-1515年ごろ描かれた素描である。聖アンナは四分の三正面で描かれ、わずかに下を向いている。この素描は現在ルーヴル美術館に所蔵されている『聖母子と聖アンナと子羊』のための準備素描である。「聖母子と聖アンナ」というテーマは晩年のレオナルドが集中的に取り組んだ課題であった。
聖アンナは聖母マリアの母で長い間子がなかったが、神によって老年ながら身ごもった。これがマリアである。このようにキリストだけではなく聖母マリアも性交によらず生まれたと考えられており、そのため聖アンナと聖母子の3人は好んで一緒に描かれた。
おそらくこの注文は1499年にミラノを征服したフランス王ルイ12世から受けたもので、この素描と洗礼者ヨハネが描かれたカルトン(原寸大下絵のこと、ロンドン、ナショナル・ギャラリー)と油彩画(上記のルーヴル蔵の作品)が現存している。おそらくこの作品は1508年から徐々に進められていて、1519年にレオナルドが死去した際にもまだ風景の部分や聖アンナの衣の裾などが完成していなかった。これらは弟子のサライが継承して仕上げた。
この絵は1636年にリシュリュー枢機卿の寄贈によってフランスの王室コレクションに入った。老年の女性として聖アンナは頭に被り物をつけている。そのためレオナルドは他の女性像のように装飾的な髪型に凝ることはこの素描ではできなかったが、他の女性素描と同じく聖アンナも控えめな伏し目がちの目をしている。レオナルドはしかしむしろ、聖アンナの被り物の複雑なひだに集中しているようだ。一方でルーヴルの完成作では被り物はほとんど同じであるが、顔の諸要素は拡大され様式化されている。
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