作品概要
《サライの素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1510年から1510年で、ウィンザー城王立図書館に所蔵されている。

この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチによって1510年ごろ描かれた肖像素描である。若い男性の横顔が右から描かれている。描かれているのは古代ギリシャ彫刻のような風貌の巻き毛の青年である。この作品はレオナルドの若い男性肖像画の中でも最も入念に描かれており、1510年ごろにのみ現れる色彩の高水準なテクニックが表れている。
理想的な生の証明
赤く下塗りされた紙に赤のチョークで描くことで明暗の表現の幅は制限されてしまうが、一方で黒いチョークで髪や目を上塗りしたり、赤のチョークと混合しながら渦巻きを形作ることでその問題を解決している。
チョークの長くゆるやかにカーブした水平のストロークが、まだ年齢とともに失われてはいない少年らしいふくよかさを保ったなめらかな肌の表面を造形している。
かすかに示された顎や、わずかに二重になったあご先のふくらみ、抑制された微笑み、まっすぐな鼻、憂いのない目、これら全てが理想的な生を証明している。
サライ説の否定
この素描はかつてレオナルドの弟子サライの肖像と考えられていた。サライは本名をジャン・ジャコモ・カプロッティといい、レオナルドが死ぬまで生活を共にしていた。サライが描いたレオナルドの作品の模写が数点残っている。彼はレオナルドの同性愛の相手であったともいわれている。
また、サライの他の肖像画との類似から《モナ・リザ》のモデルがサライであったとする説すらある。
しかし現在では、この素描についても《モナ・リザ》についてもサライ=モデル説は否定されており、実際のモデルは不明である。
この素描はレオナルドの弟子フランチェスコ・メルツィが相続したあと、その子孫からポンペオ・レオーニが買い取り、その後イギリス貴族トマス・ハワードの手を経て1690年までにイギリスの王室コレクションに入った。
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