作品概要
《使徒の頭部と建築物の素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1495年から1495年で、ウィンザー城王立図書館に所蔵されている。

本作に描かれているのはレオナルド・ダ・ヴィンチによる若い男性の頭部と建築物のスケッチである。若い男性は左に向かって4分の三ほど振り向き、下に視線を向けている。その紙は波打っていて、口は開かれている。肩の部分はわずかな線で示されている。
最後の晩餐の準備素描
この男性の習作は、ミラノのサンタ・マリア・デレ・グラツィエ教会の食堂の壁に描かれた、レオナルドの名作《最後の晩餐》に登場する聖ヤコブの準備素描である。『最後の晩餐』はミラノ公ルドヴィーゴ・スフォルツァの注文を受けて1495年から制作が始まった。
完成した壁画では聖ヤコブは右から二番目のグループの中央にいて、素描とは異なり髭を生やしもっと長い髪をしているが、わずかに開いた口や顔の角度は共通している。
聖ヤコブ
聖ヤコブはキリストの十二使徒の一人で、同じ名前のもう一人の弟子と区別するために「大ヤコブ」、「ゼベダイの子ヤコブ」とも呼ばれる。
彼は兄弟のヨハネと共にガリラヤ湖で漁師をしていた。ある日ヨハネと網の手入れをしているとキリストに呼ばれ、父や雇い人を捨ててそのまま弟子となった。キリストの死後も教団の中心的メンバーとして各地で布教活動を行ったが、捕らえられて西暦44年ごろ十二使徒のうち最初の殉教者となったという。
この聖ヤコブの頭部スケッチは、そのすばやい筆致から実際のモデルを用いて制作されたと考えられる。その頭部スケッチの下には四つの建築物の素描がある。城塞の壁の角に設けられる砦から出発してそれをドームがついた建築物へと徐々に発展させている。これらの建築物の素描は人物素描の後から付け加えられたもので、このことはこの紙片が人に見せるためではなく自分用のものであったことを示している。
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