作品概要
《バーリントンハウス・カルトン》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1505年から1508年で、大英博物館に所蔵されている。

この聖母子と聖アンナ、幼児の洗礼者ヨハネが中央に描かれた素描は『バーリントンハウス・カルトン』と呼ばれ、レオナルドの絵画構成の段階を追うことができるという点で最も重要な素描の一つである。
中央の聖母子と聖アンナ、洗礼者ヨハネが最初に描かれ、おおまかな構成がまず考えられた。その周囲の小さな素描が、構成の様々な試行錯誤の痕跡を物語る。聖アンナは聖母マリアの母であり、彼女もまた神によって性交を伴わずに聖母マリアを身ごもった。
洗礼者ヨハネはマリアのいとこエリザベツの子であり、彼が生まれる際にも神のお告げがあった。従ってこの画面には神のお告げによって生まれた神聖な家族が描かれているのである。フィレンツェの土着の伝説では、同市の守護聖人洗礼者ヨハネはキリストの親戚であるばかりでなく幼友達であり、従って彼らが遊ぶ様子は頻繁に絵画化され、市民に大変好まれたた。
この素描はレオナルドの第二次フィレンツェ滞在時代に描かれたと思われる。なぜならミケランジェロの素描『聖母子と聖アンナ』(アシュモレアン美術館)と構成や人物のポーズが類似しているからである。そのためこの『バーリントンハウス・カルトン』はミケランジェロの素描が制作された1505年までにはフィレンツェの画家の間でよく知られていたと推測される。
この作品はまたロンドンのナショナル・ギャラリーにある同じテーマの素描と密接な関係にあると考えられる。さらに同じテーマのヴァリエーションの油彩画はルーブル美術館に保存されている。あるいはまた、画家で伝記作家のヴァザーリがその著書『芸術家列伝』(1550年、1568年)に記した1503年の『聖母子と聖アンナ』(逸失)の準備素描であったとも考えられている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。