作品概要
《猫のいる聖母子の素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1478年から1481年で、大英博物館に所蔵されている。

この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチによって1478-1481年ごろに描かれた素描である。レオナルドは聖母子が猫とともにいる素描を6枚書いている。この作品を含む3枚が大英博物館にあり、残りはニューヨークの個人コレクション、ウフィツィ美術館、ボナ美術館にそれぞれ一枚ずつ所蔵されている。
キリストと同じ時間に生まれた猫の伝説はあるものの、猫という動物は例えば子羊や魚のように明確にキリストと象徴的に結びつくものではない。それどころか猫はしばしばロレンツォ・ロットの『受胎告知』のように悪魔のシンボルとして描かれることもあった。しかし何の象徴でもないからこそレオナルドは猫を好んで聖母子とともに描いた。
レオナルドはここで幼児キリストと猫とのふれあいをごく自然に表現していて、それは従来の聖母子のテーマに劣らず革新的である。それは鋭く観察された細部、例えばキリストの腕から逃れようとする猫の様子から理解できる。この素描は構成の完成度から考えて6つの素描のうち最後のものであると思われる。
背後のアーチなどから1570年ごろに描かれた『ブノワの聖母』(エルミタージュ美術館)との類似が認められるが、様式的に見てレオナルドが『マギの礼拝』(ウフィツィ美術館)に取り掛かっていた1480年前半の素描と見られている。この猫と聖母子というテーマは油彩画として描かれることはなかったが、『糸車の聖母』(スコットランド国立美術館)や『聖アンナと聖母子』(ルーヴル美術館)へと発展していく要素を含んでいる。
この素描の上半分の構成は人物たちの頭部が作り出す対角線によって堅固なものになっているが、一方で下半分は不明瞭であり、レオナルドは聖母の足の位置について試行錯誤していることがわかる。
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