作品概要
《ヘルメットをかぶった兵士の横顔の素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1474年から1480年で、大英博物館に所蔵されている。

この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチによって1475-1480年ごろに描かれた肖像素描である。兵士の胸より上が左からの側面観で描かれており、兵士は羽のついた兜とライオンの頭部のついた胸当てを身につけている。肖像画のモデルは不明である。
この作品の調査が2010年の大規模なイタリアの素描の展覧会のために行われ、その際この素描の材質が判明した。過去にはこの素描がレオナルド本人の手になるものかどうか疑う意見もあった。しかし今日ではレオナルドの真筆と見る説が有力である。というのも、レオナルドが弟子として学んだアンドレア・デル・ヴェロッキオの様式との類似が認められるからである。
特にヴェロッキオの失われた2枚の金属板レリーフ『アレクサンドロス大王とダレイオス王』のニューヨークにある断片や、ベルリンにあるコピー作品と比較すると明らな共通点が発見できる。これらのレリーフはフィレンツェの君主ロレンツォ・イル・マニーフィコの注文によってハンガリー王への贈り物として制作されたと、画家で伝記作家のヴァザーリがその著書『芸術家列伝』(1550年、1568年)に記している。
従ってこの素描は若きレオナルドがまだヴェロッキオの工房の徒弟であった頃に、師の作品をいささか単純化して模写したものだと考えられるのである。銀筆素描は下塗りをした紙に尖らせた銀の芯で描く技法で、繊細かつ緻密で半永久的に消えない線を描くことができるが、修正が困難である。
レオナルドの時代においてはまだ鉛筆が発明されていなかったため最も一般的な素描の道具であった。そのため画家の弟子たちはこの銀筆による素描を訓練として行っていた。このように工房の弟子が師の作品の模写を銀筆で行うのはよくあることで、この素描はレオナルドの徒弟時代の貴重な証言となっている。
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