作品概要
《歩くクマの素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1482年から1485年で、メトロポリタン美術館に所蔵されている。

レオナルド・ダ・ヴィンチによる『歩く熊』は1480年代前半から中期に制作された素描である。画面の中央に左側面から捉えられた熊が描かれており、熊は右前足を前に出して歩いているところである。向かって左側にはさらに拡大された熊の足だけが描かれている。彼の豊富な素描や記録ノートにはその鋭く疲れ知らずの自然界のあらゆる側面に対する観察が表れている。
この素描はおそらく実際の生きている熊を見て描かれ、また熊の解剖から得られた解剖学的知識も素描制作に一役買ったようだ。その当時はトスカーナやロンバルディアといったイタリアの地方の山々ではたくさんの熊を見ることができ、レオナルドにとってお気に入りのモチーフだった。
古代ローマの博物学者大プリニウスの『博物誌』に記録された物語に基づきレオナルドは熊を「怒り」のシンボルと考えていた。この素描は他の熊研究に関する素描、例えば熊の頭部を描いたイギリスの個人蔵の素描やその他の記録と同じグループの一部をなしていると考えられる。彼はそれらを含む大規模な解剖学の本を出版するつもりであっただろうと考えられている。
その中で彼は特に熊の足について強い興味を示しているようだ。レオナルドはほんのわずかな素早い線のタッチによって熊の毛皮をうまく表現している。このような柔らかく生き生きとした銀筆の素描技法や、紙の淡い下塗りから判断して、今まで考えられていたよりずっと早く1480年代前半か中盤、つまりレオナルドがミラノを去る前後の制作だと考えられるようになった。
座った女性のかすかな輪郭が熊の左側に見えていることから、レオナルドは紙を再利用することがあったとわかる。この女性像は1478年ごろ制作された大英博物館蔵の『ブノワの聖母』のための準備素描と関連付けられる。
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