作品概要
《子宮の中の胎児の素描》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1510年から1513年で、ウィンザー城王立図書館に所蔵されている。

レオナルド・ダ・ヴィンチが画家であっただけでなく発明者、科学者であったことはよく知られている。この素描は彼のそのような側面をよく示す作品の一つである。1510年から1513年ごろに描かれたこの素描では子宮の中にいる人間の胎児が正しい位置で描かれている。
その当時子宮は双子を妊娠した時に備えて二つの部屋に分かれていると考えられていたが、レオナルドは解剖の結果に従って一つの部屋だけを持つ子宮を正しく素描した。レオナルドは解剖学者のマルカントニオ・デラ・トッレの助力を得て発生学を研究しており、その一環として亡くなった妊婦の中にいた胎児をこのようにスケッチとして残した。
紙の中央左に開かれた子宮の中で体を丸めた胎児が描かれており、その周辺にも様々な器官が描写されている。ただしこのスケッチでは子宮壁に胎盤葉が描かれているが、これは誤りである。以前レオナルドが牛の子宮を解剖してスケッチした際にこの器官を見ているので、混同したのかもしれない。
スケッチの周囲には彼のメモが残されている。これらの詳細なメモから推測するに、彼はこのような科学研究の成果をトッレとともに一冊の本としてまとめようとしていたようだ。しかし、彼の多くの構想だけに終わった計画と同様このプロジェクトも実現されずに終わった。
トッレが1511年にペストで死去したことがその一因であると考えられる。この素描は最初フランチェスッコ・メルツィのものであったが、1482年から1490年の間にもう一枚の素描とともにメルツィの相続人であったポンペオ・レオーニによって売却され、その後1630年までにイギリスの貴族トマス・ハワードの所有となった。1690年からは王室コレクションの一部となり、ウィンザー城に保管されている。
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