作品概要
《岩窟の聖母(ロンドン版)》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1491年から1508年で、ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

同じタイトルのルーヴル美術館所蔵の祭壇画がまず「無原罪の聖母兄弟会」の注文によって、ミラノのサン・フランチェスコ聖堂に飾るために1480年に制作された。しかし何らかの理由で受け入れられず、契約が1483年に再度結ばれた。
この祭壇画は、その2度目の契約によって描かれたものの中央パネルである。
主題
祭壇画は三幅対で、中央のパネルはレオナルドが、両脇の楽器を演奏する天使が描かれたパネル(ともにロンドンのナショナル・ギャラリー蔵)は彼の弟子によって描かれ、聖堂に設置された。画面中央で青い服を着た聖母マリアが左手をかざしており、その下に幼児キリストがいる。
彼の視線の先には子供の洗礼者ヨハネがいてキリストを礼拝している。幼児キリストの後ろには天使がいる。
場面はタイトルの通り暗い洞窟で、その奥には湖と山が見える。この絵のテーマは「無原罪の御宿り」というキリスト教の教義であると考えられている。これはキリストだけでなくその母である聖母マリアもまた性行為によらず生まれ、それゆえ人類全てが負う原罪を彼女は持たないとする考えである。
しかし本作品は他の「無原罪の御宿り」の絵とは異なるモチーフが多く登場しており、むしろフィレンツェの土着の信仰を反映しているとされる。
画面左の少年は洗礼者ヨハネであるが、彼もまた神によって宿った子供であり、フィレンツェの伝説では伝統的に幼児キリストの遊び相手と考えられていた。
弟子による加筆
現在ルーヴル美術館にある作品と異なり、本作品には弟子の手が多く加わっていると考えられている。研究者によってはこの作品をレオナルドの作品リストに入れない場合もある。
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