作品概要
《病める子》は、画家のエドヴァルド・ムンクによって制作された作品。制作年は1885年から1886年で、オスロ国立美術館に所蔵されている。

《病める子》は、1885年から1886年に掛けて制作された。リアリズム(写実主義)からドイツ表現主義への転換期の作品である。ドイツ表現主義は作品を通して「不安の感情」を表現し、リアリズムとは異なる抽象的な描写や筆遣いが特徴的である。
制作の時代背景と技法
作品では、青白く痩せ細った病める少女が描かれている。当時、リアリズム(写実主義)において、病める少女や瀕死の子供が作品の主題として多く取り上げられた。少女は病床で上体を起こし、頭を白い枕にもたせかけている。少女に付き添う女性は、少女の手をとり、悲しみに打ちひしがれている。薄暗いカーテンは不吉な悪い前兆、少女の死が差し迫っていることを表している。
作品の主題となる少女以外は色彩が抑えられて描かれていることにより、少女の描写が際立つ。また、ムンクは細い縦縞模様に絵の具を滴らせ、絵の具を厚く塗ることにより、作品に濃い色彩の層を作り出している。
作品の少女はムンクの姉ヨハンネ・ソフィエ(Johanne Sophie)がモデルであるといわれる。ムンクにとってソフィエは最愛の姉であったが、1877年、肺結核により15歳の若さでこの世を去った。付き添う女性は、叔母カレンであると考えられる。ソフィエは不安そうな眼差しでカレンを見つめ、カレンの手をしっかりと握っている。
現在
現在、《病める子》はオスロ国立美術館(ノルウェー・オスロ)にて展示されている。
なお、ムンクは《病める子》(1885~1886年作、オスロ国立美術館蔵)を基に、同作品名にて他5点の作品を描いている。1896年作はイェーテボリ美術館(スウェーデン・イェーテボリ)、1907年作はテート・モダン(イギリス・ロンドン)にて保管されている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。