作品概要
《モロッコ人》は、画家のアンリ・マティスによって制作された作品。制作年は1915年から1916年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

《モロッコ人たち》は、1915年から1916年にかけてアンリ・マティスが描いた油彩画で、大きさは181.3cm×279.4cm、現在はニューヨーク近代美術館が所蔵する。
画風の変化
画家は1906年のアルジェリア旅行以降、アフリカ・アートやプリミティビスムの影響を受ける。1910年にミュンヘンでイスラム美術の大展覧会を鑑賞した後、2ヶ月間イスラム美術を学ぶためスペインに滞在する。1912年と1913年にはモロッコ・タンジェに滞在し、絵を描きながら画風を変化させていった。
本作品では、画家の中心的テーマである北アフリカでの体験の功績が窺える。
3分割
画面を奇妙に3分割し、従来の構成要素の法則を可能な限り破壊しているにも関わらず完成度が高い。黒い背景は3つの異なる要素を隔て、その間を自由に取り持っているようだ。画面上部左側の建築物は、北アフリカ・カスバへの入り口を示唆し、バザールへの遊歩道にあるメロンと木々を描くことで、モロッコ人の庭を賑やかで詩的に表している。
画面左側には祈りを捧げるモロッコ人の集団を描いているが、描かれているものが何なのか判別し難い。大地に頭を擡げて祈りを捧げる信者たちなのか、たくさん置かれたメロンなのか鑑賞者が見紛うこともあるだろう。前景右側は、左側に比べて装飾的で簡素に表現している。
画面左側の描写で起こり得る誤解については、画家も織り込み済みで、画面右の入り組んだ歩道が分かりやすいよう、敢えて信者とメロンという両義的な表現をした。3分割した場面の全てに登場する円形モチーフ、ドーム状の建築・壺に入った青い花・丸いメロン・丸い体の祈る人々、を繰り返し描くことで画面全体に統一感をもたらした。
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