作品概要
《紫のコートの女》は、画家のアンリ・マティスによって制作された作品。制作年は1937年から1937年で、ヒューストン美術館に所蔵されている。

『紫のコートの女(または紫のコート)』は、1937年アンリ・マティスが制作した81cm×65.2cmの油彩画で、現在アメリカ・ヒューストン美術館に所蔵されている。
モデル
本作品のモデルは、シベリア出身のロシア人女性、リディア・デレクトルスカヤで、1933年画家が63才の時に病気療養中の、マティス夫人の付き添いとして雇われたが、その後画家の愛人となってモデルを務めながら晩年の画家の生活を支えた人物である。
マティスは彼女について、「今までのモデルたちと違う金髪の青い目をした澄んだ肌の彼女は、まるで“雪の女王”のようだ。」と語った。
制作当時リディアは25歳、マティスは65歳。マティスは画壇で名声を極めていたが、決して彼女にヌードを要求せず、リディアが画家に敬意を抱くきっかけとなった。
画面の技法と構図
本作品はマティス円熟期の「装飾的表現」の傑作である。女は異国情緒溢れるモロッコの衣装を身に纏い、入り組んだ抽象的な装飾と色彩に囲まれている。
画面には様々な色彩が並行してしなやかな曲線で描かれ、太い輪郭線は黒を用いて人物を引き立たせる。
黒い輪郭の鮮烈な紫色のコートはモデル自身が際立つように描かれ、まるで彼女が、腰かけている長椅子から飛び出しいつでも立ち上がって動き回るような躍動感に溢れている。
画面左側の花が活けられた花瓶や人物の足元に置かれた雑誌が画面に奥行きを感じさせる。画家にとってこの作品は晩年期に描いた油彩画のひとつであり、1950年以降は油彩画を断念し、切り絵制作へと移行した。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。