作品概要
《ジャズ》は、画家のアンリ・マティスによって制作された作品。制作年は1945年から1947年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

《ジャズ》は切り絵コラージュの挿絵と画家の自筆を含んだ作品集である。作家はアンリ・マティス、1947年9月30日テリアード社から初版出版された。
とにかく色彩豊かという印象である。テーマをサーカス・劇場としており、鮮やかな色彩、詩的な文章がそこここに散りばめられている。
コラージュという新しい手法の発見
1941年は、マティスにとって、思いもかけず新しい表現手段への転換期となった。彼は十二指腸癌を患ったため手術をした。その影響で、以後の生活のほとんどをベッドと椅子と共に過ごすことになり、動きに制約が生まれた。
これまでどおりの絵画や彫刻の制作ができなくなった彼は、コラージュという表現方法を見出した。色紙から形を切り出す、現在、カット・アウト(切り抜き)とも呼ばれる手法である。
新しい手法の確立へ
彼は、74歳から《ジャズ》の制作に取り掛かり、シリーズの制作に2年の月日を費やす。そしとこの《ジャズ》の完成とともに、現在では彼の作品の象徴とされている「色彩」への新しい手法が確立されたのである。
まず、アシスタントの手助けのもと、ガッシュ絵具を塗った紙を準備する。それらを自由なサイズや形に切り抜き、pochior(フランス語)と呼ばれるステンシル版に貼り付けていく。そうして、紙コラージュやデコパージュ作品を次々に生み出していった。
タイトルについて
マティスの作品はテリアード社のフランス芸術雑誌「Verne」の表紙に予定されていた。マティスの作品を見た同社は、その題名を《ジャズ》と命名した。40.64センチ×66.04センチの雑誌で、20点のカラー印刷を含むものであった。中には制作過程の画家の想いが自筆で記載されている。
この《ジャズ》という題名は、「アートと音楽との融合を感じさせるとても素敵なタイトルだ」とマティス自身も大層喜んだ。出版部数は決して多くなかったのだが本作は人々の称賛を得た。
サーカスからインスピレーションを得た
もともと、《ジャズ》は「サーカス」というタイトルでの発売が考えられていた。この「サーカス」が持つイメージがマティスの作品作りに多大な影響を与えた。サーカスに登場する役者たちの生き生きとした演技やバランス感覚を伴う動きから、彼はインスピレーションを受けたのである。
彼は後に「生き生きとした激しい色調の《ジャズ》は、サーカスや民話、そして自分の過去の旅の記憶が織りなすハーモニーである。」と述べている。
自身の人生をも映し出した
《ジャズ》に登場するサーカス団員と思われるモチーフの多くは一人で描かれている。これは、彼の人生を比喩した表現とも想像できる。
実際《ジャズ》の至る所には、画家の自伝的要素が盛り込まれており、ラグーンシリーズは、タヒチ旅行の回想記である。また、愛や死や運命といった、人生そのものを抽象的に表現している作品もある。
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