作品概要
《フランシスコ会修道士の聖母》は、画家のドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャによって制作された作品。制作年は1287年から1288年で、シエナ国立絵画館に所蔵されている。

『フランシスコ会修道士の聖母』は、中世後期の画家ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャにより描かれた作品である。本作の一番の特徴は、巧妙に考えられた構図にあるといえるだろう。本作は2枚続きもしくは3枚続きの多翼画の一部であると考えられており、少数の私的崇拝集団(おそらくフランシスコ会)のために描かれたとされている。
本作を図像学的観点から見ると、『慈悲の聖母』と同類であると言えるであろう。中央の聖母目線は絵画を見る者に向けられつつも、その手はまるで足元にひざまずく3人の修道士を守ろうとするがごとく、ローブの裾をつかんでいる。この3人の修道士は、聖母が腕に抱く子キリストのために祈りを捧げている。
本作はチマブーエによる影響とビザンチン様式を混ぜ合わせたような2つの特徴を合わせ持っており、それらがドゥッチョ独特のソフトな筆のタッチにより和らげられている。また、当時の定番であった金箔に変わって、背景に小さな四角形を並べている点から、フランス様式の影響も受けていることがはっきりと見てとれる。計算し尽くされた輪郭取り、しなやかにカーブを描くローブの裾、そして洗練された色使いは、空間がより広く見えるように考えられたものである。これにより本作は、直線性となめらかな曲線性を良しとするビザンチン様式の傑作であると言えるだろう。
手前に跪く修道院たちと中央に置かれた玉座による遠近画法の表現は、チマブーエの教えに習ったものと考えられる。しかし子キリストの足の姿勢はドゥッチョ独特のものであり、これは『ルチェライの聖母』及び『ブオンコンヴェントの聖母』にも見ることができる。
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