作品概要
《聖母子と二天使(クレヴォレの聖母)》は、画家のドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャによって制作された作品。制作年は1283年から1285年で、シエナ大聖堂付属美術館に所蔵されている。

『クレヴォレの聖母』は、ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャにより描かれたテンペラ画である。本作は『ブオンコンヴェントの聖母』と並んで、ドゥッチョのごく初期の作品の一つであると考えられている。この二つの作品を比較してみると、ともに伝統的なビザンチン様式の手法が顕著に表れていることがわかる。
例えば優雅にポージングされた聖母の手、典型的な下向きに曲がった聖母の鼻、聖母がベールの下に着ている赤い色の洋服(マフォリオン)、そして美しくひだをよせ、輝く糸が縫いこまれた黒いベールである。時系列としては、『ブオンコンヴェントの聖母』が描かれたのちに『クレヴォレの聖母』が描かれたのであるが、ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャが前者の作品よりも後者の作品の中でさらに強調的に取り入れたと見られる点がいくつかある。それはまず、聖母の頬と顎に当たる絶妙な光の表現、そして聖母の顔周りのベールによせられた細やかなひだの様子の表現であろう。
また本作には、わずかながらではあるものの、フランス様式の影響を受けていることも見てとれる。まずは上部の両端に描かれている優雅な二人の天使の描き方である。また、子キリストが着用している洋服は透け感のある素材で描かれているために素肌が見えており、結び目のある紐がついていることも挙げられる。そして何よりも、聖母子の腕に抱かれている子キリストが、人懐こそうな様子を見せていることである。
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